フィンランド式”おもてなし”が実感できる
- ライター栗原 薫さん
- 投稿日2015年03月23日
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暖かみを感じるレセプション
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近隣住民の利用も多い
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二人用スタンダードルーム
中央駅から電車+徒歩で15分、バスで20分、トラムだと30分はかかり、決して近いとは言えないが、その“不便”を越えて余りある魅力に富んだホテル。
ホテル名でもあるカピュラ(Käpylä)というのはヘルシンキ北部の地名で、1960年代の木造家屋が立ち並ぶ美しい地域として首都圏住民にはよく知られている。映画「かもめ食堂」で中年のフィンランド女性が住んでいた場所といえば、鬱蒼とした緑に囲まれた住環境を思い起こす人も多いだろう。
1番トラムに15分も乗ると中心部を抜け、菩提樹に挟まれた路線の両脇に築50~60年の木造建築が立ち現れてくる。車窓から見る町並みが素晴らしく、トラムでの移動自体が楽しい。ホテルは終点の目の前。道をはさんだ岩山に登れば市内を見渡せるし、少し足を伸ばせば避暑地のような住居区が広がる。同ホテルでの滞在は、観光スポットの核心部に寝泊りするようなものだ。
総客室数40室、最大収容人数は100人程度という小規模ながら、サウナとレストランは高級ホテルにひけをとらない。大小あわせて3つあるサウナは家族利用などで貸切ができるほか、長さ15メートルの室内プールが隣接。火照った体を泳いで冷やすという、フィンランド人も憧れる本格的サウナの醍醐味を体験できる。
街路樹に面したレストランは全面ガラス張りで、春夏には木々の緑が目にまぶしい。まるで公園内で食事をしているかのよう。ランチビュッフェでは典型的なフィンランド料理を10ユーロ以下で提供しており、宿泊客以外の利用も多い。
小規模ホテルの利点は、スタッフが宿泊客の個別要求に対応しやすいというところにある。たとえば通常ならスパでしか味わえないサウナでの伝統的あかすりを依頼できたり、周辺ハイキングをアレンジしてもらえたり・・・。大規模ホテルの快適さは望めないが、かたくなにフィンランド式を守り通しているのがこのホテル。一度滞在すれば、きっとまた戻って来たくなる場所。