台湾各地の夜市や観光地に行くと、よく「東山鴨頭(トンシャン・ヤートウ)」の看板を掲げた屋台を見かけます。鴨頭の文字にひかれて覗いてみると、文字通りの鳥の頭や脚などがずらっと並んでいて、思わずひるんだ人も多いのではないでしょうか。東山鴨頭の看板は台湾中至る所で見かけても、チェーン店だったりするわけではありません。扱っているのは同じ鴨の頭や脚でも、正真正銘の「東山鴨頭」の店は台南市東山区にある「籃記東山鴨頭」だけです。
籃記東山鴨頭は、嘉義との県境に近い台南市の北部にある小さな町、東山のメインストリートにあります。全台湾に知られた東山鴨頭の創始店となれば、そこそこの構えの店を想像しますが、実際には毎日午後だけ営業する屋台なのです。町の中心の交差点のビルの軒先のようなところに店を出します。そこに、開店時間を待つように行列ができます。知名度の大きさと屋台の質素さのギャップには驚きです。
下ごしらえは別の場所でやっていますが、最後に揚げるところは屋台でやっているので、常に出来たてを買うことができます。
扱っているのは食肉として肉を取ったあとの鴨の鴨脚、翅膀、脖子、鴨頭の4部位のみです。材料は水洗いして、ひとつひとつ手作業できれいに羽毛を取り除きます。産毛まできれいに抜いたあと、たれの入った大きな鍋で煮て味をつけます。この味付けの作業を滷味(ルーウェイ)といいます。ルーウェイは、肉や練り物、野菜、キノコ類などを煮込んだもののことで、夜市の屋台などでもルーウェイの屋台はよく見ます。
この味付けの基本は甘辛醤油ですが、そこに八角や薬膳に使う材料などがいろいろ入っています。配合は秘密だそうです!じゅうぶんに煮込んだ後、一度風に当てて乾かし、しっかり味を浸みこませます。そのあとたっぷりの油で揚げます。たれは継ぎ足しで代々伝わるものですが、揚げ油は新鮮なものに毎日交換しているそうです。出来上がりの味はかなり甘く、手がべとべとするくらいの糖分があります。
鴨の4つの部位のうち、鴨脚は鴨の脚のいわゆるモミジ(鴨脚場合はイチョウ?)の部分で1本7元。コラーゲンが多いので女性に人気です。翅膀は手羽先で1本25元。弾力のある皮が付いていて、酒の肴にぴったりで、食べやすさからするとこれが一番です。脖子は長い喉の部分で、他に比べると厚めの皮が付いていて、味がよく浸み込んでいますが、ちょっと脂っこい感じがあって好みが分かれるところです。この部位は量り売りで1斤(600g)200元。看板の鴨頭は文字通り頭の部分で、1個25元。皮、嘴、舌、脳などがついています。それぞれの食感の違いを楽しむのが通らしいのですが、皮はともかく、それ以外の部分を食べるのは、慣れないとなかなか難しいものがあります。
食べる時は手で持って、骨の回りについている皮をくわえて剥ぎ取り、肉、ゼラチンなどをこそぐようにしてしゃぶりつくので、はた目を気にしてはいられません。糖分が揚げ油と絡んで蜜をかけたようなアメ状になって、テカテカしています。表面のしっかり揚がって、焦げた蜜のような味がついた皮を食べていると、病みつきになります。以前はもっと塩味が濃かったそうですが、今の人の好みに合わせて少しずつ甘くしているのだそうです。
東山の隣町に白河という町があり、そこには「白河鴨頭」という看板を掲げた、同じように鴨頭を売る屋台があります。こちらのほうは伝統の味に近いというので、東山鴨頭は甘すぎるという人は、白河鴨頭に買いに行きます。たしかに味に違いがあって、東山鴨頭はおやつ代わりに、白河鴨頭は酒のつまみに合いそうです。
籃記東山鴨頭は、屋台から5分くらいの所に「籃色鴨子」という娘夫婦が営業するレストランを持っています。こちらでは鴨頭だけでなく、もっと幅広く鴨肉を素材にした創作料理を提供しています。ゆっくり食事をしたいなら、こちらの店がおすすめです。
アクセスは台鉄新營駅からタクシーで10分ぐらい、隣町の白河との間は5分くらいの距離です。言葉は中国語のみですが、品目が4種類しかありませんから、指差しでOKです。
クレジットカードは使えません。
Lanji Dongshan Duckhead 籃記東山鴨頭 ランジートウシャンヤートウ
トルヨコ
(ガイドブック編集人)
小さな屋台だが台湾随一の人気の鴨頭(ヤートウ)の店
- 投稿日2018/12/18
2011/08訪問
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ジャンル屋台
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エリア台南市その他
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住所
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アクセス台湾高速鉄道 新営駅からタクシーで約10分
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電話番号+886-6-6802856
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営業時間13:00-18:30
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定休日無休
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予算100台湾ドル~
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公式サイト
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