1935年に建てられた軽井沢聖パウロカトリック教会は、今も竣工当時の面影を残すクラシックな木造の教会。遠藤周作の戯曲『薔薇の館』の舞台となり、堀辰雄は『木の十字架』でこの教会を「どこかスイスの寒村にでもあり
1935年に建てられた軽井沢聖パウロカトリック教会は、今も竣工当時の面影を残すクラシックな木造の教会。遠藤周作の戯曲『薔薇の館』の舞台となり、堀辰雄は『木の十字架』でこの教会を「どこかスイスの寒村にでもありそうな、朴訥な美しさに富んだ、何ともいえず好い感じのする建物」と描写しています。
軽井沢駅からバスで4分の「旧軽井沢」から歩いて4分ほど。旧軽井沢銀座通りにも近く、人気の観光スポットのひとつです。私が訪れたときも、人が入れ替わり立ち替わりやって来ては、教会の姿を写真に収めていました。
そして、ひとたび教会のなかに足を踏み入れると、外の賑やかな空気が一変。しんと静まりかえった教会内は戦前から祈りの場でありつづけた歴史の重みが感じられ、その神聖な雰囲気に圧倒されました。
この教会を設計したのは、チェコ生まれの建築家アントニン・レーモンド。フランク・ロイド・ライドとともに1919年に来日し、日本の近代建築の発展に大きく寄与した人物です。屋根がこけら葺から銅板葺になったり、教会内の椅子が一人がけのものから長椅子に変わったりと長い歴史のなかでの変化はいくつかありますが、レーモンドが設計した当時の雰囲気はほぼそのままなのだそうです。
そして、教会の入口側の奥には、二つの扉がついた「告解室」も。小さな部屋で罪を告白するシーンは、映画などで一度は見たことがあるのではないでしょうか。伝統的なカトリックの教会に見られるこの部屋も実際に見学することができます。