ロス・インヘニオス渓谷は、トリニダーの西方12 km に位置しています。日本人の感覚では、渓谷というより、むしろ盆地といった感じです。
現在はだだっ広い荒野としか見えませんが、18世紀末から19世紀にかけては、砂糖の一大生産地として、繁栄を極めました。絶頂期には50以上の製糖工場があり、その工場やサトウキビのプランテーションでは、3万人を超す黒人奴隷が労働を強いられていました。こうして製糖は、キューバの基幹産業に成長し、その生産高は世界一になったのです。
ところが、19世紀後半に入ると、奴隷制度の廃止や砂糖相場の暴落等によって、衰微の一途をたどり,工場は操業停止に追い込まれていきます。
現在、総面積270平方 kmのプランテーションと70以上の製糖工場が、廃墟と化しています。
そんな中で、往時を偲ばせる遺構が残っているのが、マナカ・イグナサとグアチナンゴ。
マナカ・イグナサには、農園主アレホ・イスナガが1835年に構築した、高さ45 m の監視塔、通称“イスナガの塔”と農園主の邸宅が現存。監視塔は創建当時、キューバで最も高い塔だったと言われており、まさに、イスナガ家がその権威を見せつける象徴でした。塔は登ることができ、かつて奴隷を見張っていた最後部からは、ロス・インヘニオス渓谷が一望できます。邸宅は現在、レストランとして営業。
マナカ・イグナサではお土産に、繊細な刺繍が入ったファブリックが売られています。この地に移民した中国人から伝わったそうです。
なお、ロス・インヘニオス渓谷は、トリニダーとともに、1988年、世界文化遺産に登録されています。
Valle de los Ingenios ロス インヘニオス渓谷
池上和徳
(DTACキューバ観光情報局代表)
大地に刻まれた甘く、そして過酷な記憶!
- 投稿日2016/03/24
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