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- ゴシップ記事の読み方
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エリア:
- 北米>カナダ>バンクーバー
- テーマ:留学・長期滞在
- 投稿日:2010/03/09 19:18
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☆15年間愛用する英英辞書
「スチュワーデス」という呼び方が「客室乗務員」に変わって久しい。性別で分ける呼称を止めた1980年代は、折しも外で働く女性が物珍しい目で見られなくなった時期だ。言葉は社会の価値観を反映する。私が取っている授業「Communication and Everyday Life」ではメディア・リテラシーの一環として、このような日常に使われる言葉と、社会や政治との関連性を研究している。
私が着目するのは、週刊誌やワイドショーの芸能ニュース「ゴシップ」の言葉だ。芸能人がある商品を褒めれば翌日には売り切れになるぐらい、彼女ら・彼らの影響力は大きい。それだけにゴシップは、社会の価値観を形成する“権力”のひとつと考えられる。なかでも気になるのは、家庭を持つ女優と男優に対する日本のゴシップの扱いだ。配偶者や子どもがいるという条件は同じながら、性別によってゴシップが騒ぎ立てるポイントは随分違うのだ。
例えば、某大女優の息子が覚せい剤取締法違反で逮捕された時のこと。それまでこの女優を「良妻賢母」のイメージで持てはやしていたゴシップマスコミは、一斉に手の平を返した。「子どもの躾も出来ないダメ母」「親失格」の大合唱である。同じようにテレビで会見した夫には父親の責任を殆ど問わず、マスコミは非難をほぼ全て、女優の側に集中させた。まるで子育ては母親1人でするもので、全責任は母親にあると決め込んだような論調だった。また、宝塚出身で年齢不詳の女優が結婚にあたり「家庭よりも仕事第一です」と発言した際も、これまたゴシップから「冷たい」とバッシングの嵐だった。
男優が子育てにつまずいたり家庭より仕事を優先したりしても、「親失格」や「冷たい」といった否定的な言葉をゴシップが使うことは滅多にない。女性だけを何としても家庭に押し込もうとするゴシップの圧力は、社会進出と共にビジネス力、経済力を付けてきた女性へのバックラッシュ(反動)と考えられる。専門家によると、外でバリバリ働くような“攻撃的な”女性の存在は男性優位の社会を脅かすため、作り手が男性中心であるマスコミは拒否反応を示すのだそうだ。一方男優の場合、結婚の際には年収や仕事の実績がゴシップに細かくチェックされる。「経済力がなければ男じゃない」とのプレッシャーがかけられるのも窮屈なものだろう。これも、大黒柱のイメージを植え付けることで男性の支配力を維持するためだという。
ゴシップや広告によるジェンダー(性役割)の扱い方はその社会の成熟度を映し出す。ちなみに北米のゴシップは家事や育児にいそしむ男優の姿を肯定的に報道しているが、それでもこのような研究が行われるのは、目指す成熟レベルには依然として達していないということなのだろう。日本のゴシップはレベルの設定すらまだなのかもしれない。ところで下記の『週刊メディリテ!』、第一回は「児童ポルノの闇に堕ちて」である。良かったらご購読を。
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