180年の伝統を今に伝える
- ライター栗原 薫さん
- 投稿日2015年02月21日
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高級クラブを思わせるエントランス
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クラシックな雰囲気のレセプション
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館内は落ち着いた装飾で統一
中央駅の正面入り口の斜向かい。トラム乗り場をはさんで50メートルの距離と、非常に分かりやすい場所にある。ヘルシンキは街自体が小さいうえ、各種の交通機関が発達しているので、現実的にはどのホテルに滞在しても観光や移動の便利さに大差があるわけではない。しかし、中央駅が至近距離にあると、何かと安心できるものだ。なにより、なれない町での第一夜となるホテルがすぐにみつかるのは嬉しい。文字通りに街の中心部にあるから、食事や買い物に不自由することはない。
同ホテルの歴史は長い。まずは1833年、マーケット広場に面した一等地に開業したのが発端。その建物は現在、市庁舎として使われている。180年を越える伝統は、実質的にはフィンランド最古の宿泊施設として知られている。今の場所に移ったのは1913年のことで、「全室に電話、セントラルヒーティングがあり、熱湯が出る」という当時としては画期的なサービスを実現。その後、何度か所有者が変わり、2006年に内装を、2015年に外装をリノベートしたが、古きよき伝統は連綿と続いているのが特徴。博物館のような重厚なインテリア、照明を控えめに絞った室内に落ち着いた時間を過ごせるだろう。昨今のホテルの“デザイン化”、“ブティック”化とは異なった方向性で個性を演出している。この点は好みの問題だが、重厚な雰囲気を味わいたい人にお勧めしたい。中でもホテル内のバーは独得の造り。教会ドームのような丸天井を備え、小噴水を配するなど、「ヨーロッパで最も美しい」という自負もあながち誇張ではない。
100年を越える建物は歴史の香りを伝えてくれるが、室内の手狭さや設備の機能性が気になる人もいるだろう。また、部屋によっては隣接するクラブの騒音が漏れてくることもある。それらを考慮しても場所、雰囲気、スタッフの対応、値段等々を総合評価すれば高得点を与えたいホテルである。