中心部にありながらも隠れ家の趣
- ライター栗原 薫さん
- 投稿日2015年03月23日
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20世紀初頭の高級住宅を改装
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室内・館内は地元アーティストの作品で装飾
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五つ星じゃない、のメッセージは自信の表れ
部屋はせまい。レストランがないから朝食すらホテル内ではとれない。サウナもなければ、ロビーといえるような共有スペースもない。しかし、あえて紹介したい理由がいくつもある。
誰もが認めるのは場所のよさ。ストックマンデパートの斜向かいを右折して30メートル。中央駅から徒歩5分という近さに加え、様々なカフェやレストランが密集しているのがありがたい。朝食はホテル真向かいにある提携店のSISがお勧め。宿泊者は割引価格(9.5ユーロ)で利用できるし、純北欧スタイルの定番を中心とした品数の豊富さは、一般ホテルのワンランク上。ホテルの裏手はムーミンショップもあるショッピングセンター、フォルム(Forum)につながり、前述のストックマンと合わせて買い物にも至極便利だ。
サウナには是非入りたいというなら、隣接する公営プール(Yljönkadun Swiming Hall)へどうぞ。映画「かもめ食堂」にも登場した歴史ある水泳場で、古代ローマ風呂タイプの内装に圧倒されるとともに、市内では数少ない薪式サウナを体験できる。
これだけの環境で、季節によってはシングルルームが60ユーロで利用できるというコストパフォーマンスも見逃せない。
建物自体も味わい深い。1912年完成の石造建築は、古城の外壁を思わせる重厚さだ。6階のレセプションに上がるエレベーターは木製の扉で覆われたレトロなもの。その周囲をらせん状に包む階段も一度くらいは利用してみたい。普通なら入ることはできない由緒あるアパートの住民になったような気分になれるだろう。
最大でも100人に満たない収容能力だけに、宿泊客一人ひとりへの配慮が行き届いている。希望に応じた備品のレンタルや、カスタムツアーの相談にのってくれるのはもちろん、連泊やグループ利用なら、事前に宿泊料金の割引交渉さえできる。
ホテルというより、隠れ家のような安堵感に包まれる場所。もっと多くの人に知られてよい穴場だ。