ヘルシンキに現存する建物のおよそ9割が1920年代以降に建てられたことはあまり知られていない。20年代というのはフィンランドが独立(1917年)を果たし、第一次建築ラッシュを迎える時期。その中でもいまだにひときわ目立つ建造物がこのホテルだ。トルニ(タワー)の名にふさわしく、13階建て、69.5メートルの勇姿は市内の方々から眺めることができる。 1931年の開業からしばらくはフィンランド随一の高層ホテルとして名を馳せた。しかしそのユニークさは高さだけではない。設計には著名な建築家であるヴァルター・ガブリエル(Valter Gabriel Jung)を起用。アールデコの外観とクラシカルな内装が見事に調和し、ロビー、階段、客室それぞれが独立した芸術的な空間を作り上げている。作曲家のジャン・シベリウスや作家のミカ・ヴァルタリなど、フィンランドを代表する文化人に愛されたのもうなづける。 オープン当時から話題を集めていたこの場所は、一種の社交場として機能していた時期が長く、その伝統は今も続いている。中庭および屋上テラスのバーは他にない独得の雰囲気を持ち、宿泊客のみならず、地元っ子を始め、観光客の人気が高い。特に屋上
続きを読む
写真3枚
広く文化人に愛された社交場は今もなお
ライター栗原 薫さん
投稿日2015年02月12日
約70メートルの高さを誇る
アート感覚満載のレセプション
市内360度を見渡せる屋上テラス
ヘルシンキに現存する建物のおよそ9割が1920年代以降に建てられたことはあまり知られていない。20年代というのはフィンランドが独立(1917年)を果たし、第一次建築ラッシュを迎える時期。その中でもいまだにひときわ目立つ建造物がこのホテルだ。トルニ(タワー)の名にふさわしく、13階建て、69.5メートルの勇姿は市内の方々から眺めることができる。 1931年の開業からしばらくはフィンランド随一の高層ホテルとして名を馳せた。しかしそのユニークさは高さだけではない。設計には著名な建築家であるヴァルター・ガブリエル(Valter Gabriel Jung)を起用。アールデコの外観とクラシカルな内装が見事に調和し、ロビー、階段、客室それぞれが独立した芸術的な空間を作り上げている。作曲家のジャン・シベリウスや作家のミカ・ヴァルタリなど、フィンランドを代表する文化人に愛されたのもうなづける。