ニューヨーク最高人気のブテイックホテル
- ライター奥谷 啓介さん
- 投稿日2017年10月26日
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保護地区に沿った外観を保つ
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ジェームズデーンの大壁画に驚く
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日本の古屋敷の木材で組まれたプール
グリニッジホテルは数多あるニューヨークのホテルの中で、現在、最高の業績をあげているホテルのひとつ。俳優、ロバート・デ・ニーロが保有するホテルとして知られているが、この人気はそれから生まれているだけとは言えない。
トライベッカは古い建物が多く残る保護地区。そこにある既存の建物をとり壊して、近代的なホテルを建てることは法的に許されない。ここに建つグリニッジホテルも100年以上昔からあるような外観をしているが、実は、2008年の4月にオープンしたもの。トライベッカの街並みにフィットした建物となっている。
内装も然り。ロビーの天井は、ニスすら塗られていない生木の柱で組まれている。床はレトロ模様のタイル張り。その上に、色褪せたカーペット。広い居間には、年季の入った家具が置かれ、中央に炎が燃え盛る暖炉がある。オープンハウスの中庭は、レンガの壁で囲まれていて窮屈さを感じる。だが、隣接したビルに描かれたジェームスデーンの巨大壁画を目にするとき、人々は〝信じられないものを見た″という感動を覚えるに違いない。
ロビーにはバーカウンターがあり、スタッフがサーブを行う。ここは宿泊ゲストだけが利用できる空間。ホテルが満室の時でも、外部者がいないので、静けさを保てる。異常な数のリピーターがついている理由のひとつは、ホテル全体が宿泊ゲストだけの場になっているからだ。ロビーが部屋の延長となり、深夜にルームサービスを利用して、そこで食事をすることなども可能にしてくれる。夜中のバーは勝手に使って、〇〇を飲んだと申告しておくだけですむ。
地下にはジム、スパ、プールがある。その壁と天井は250年前の日本の家屋で使われていた木々で造られている。映画のセットのようなその施設は幻想の世界のようだ。また、和を取り入れ、ウオッシュレットがそのフロアーに完備されている。客室のドアは、ところどころ腐りかけたようにも見える木製素材。88ある客室は全て装飾が異なり、チベット製シルク、イギリス製ソファ、モロッコ製タイル、イタリア製大理石などの素材が使われている。どんなに最先端の素材を使って建てられたホテルでも、10年たてば褪せて見えるようになるが、アンティーク素材にはそれがないという強みがある。
アンティークに興味がない人でも、この驚きとサービスがあれば、次も戻ってきたくなる。そして訪れる度に、次第にアンティークを見る目が肥えてきて、楽しみは大きくなる。それは絵画に目覚めた人が美術館に通いたくなるのに似ている。グリジッジホテルは、大人のテーマホテルと呼びたくなる場所。一度、宿泊したら、次もこのホテルに戻りたい衝動から逃げられなくなるホテルだ。
2017年10月訪問