Hotel Metropole ホテル メトロポール

ピカピカの新築ホテルでは絶対味わえないこと――それが、その地の歴史と文化そのものに浸ってしまう醍醐味。ホテル・メトロポールは、どこにもあるゴージャスホテルとは一味違う歴史・建築ミュージアムのようなホテル。文化遺産めぐりツアーにも組み込まれているのです。

このホテルは独立したばかりのベルギーが、植民地開拓や産業技術の革新で欧州をぐいぐいひっぱっていた19世紀終わりに創業し、今も現役で活躍するブリュッセルの近代史そのもの。古代ギリシャ様式に始まり、ルネサンス様式、植民地主義を思わせる瀟洒な装飾に目を奪われます。初めて電気、エレベータやセントラルヒーティングを整えた、最先端ホテルでもあったのです。

一階のフロントやラウンジ付近は、近くの証券取引所に出入りする資本家やブルジョワ層のための当時の銀行の面影を残し、あらゆる建築様式や高級建材がふんだんに取り入れられました。後にアールヌーボ様式で多用されるようになった見事なステンドグラスを始め、豪華シャンデリアも、金箔を貼りめぐらした装飾や調度品、芸術価値の高い彫刻や絵画が至るところに。銑鉄の籠のような骨董品級エレベータは誰もが「これ本当に使えるの？」と目を丸くするでしょう。

世界中の王侯貴族や国家元首など、あらゆる著名人が滞在してきた5つ星ホテルですが、フロント右側の壁にある写真もぜひ見てほしい。1911年、著名科学者が出席して世界初の国際学会が開催されたのもこのホテル。伝記や教科書で読んだアインシュタインやキュリー夫人も、ここで科学を語り合ったのです。

ゴージャスな１階付近に比べると、通常の客室はいたってシンプル。古いホテルなので、部屋の向きや大きさや設備が微妙に異なることもあるので、ホテルに「快適」「便利」を重視する方には不向きかもしれません。