藤原氏の氏寺として栄え、天皇家からの帰依も厚かった興福寺。多くの堂宇や文化財を有している中でも、
猿沢池から眺める五重塔は優美さが際立っており、奈良を代表する景観の一つにもなっています。
その五重塔(
藤原氏の氏寺として栄え、天皇家からの帰依も厚かった興福寺。多くの堂宇や文化財を有している中でも、
猿沢池から眺める五重塔は優美さが際立っており、奈良を代表する景観の一つにもなっています。
その五重塔(国宝)は、奈良時代に聖武天皇の皇后、光明皇后によって建立されました。しかし五度もの被災と再建をくり返し、現在の塔は室町時代に建てられたものです。高さは50.1m、均整のとれた塔は実に迫力があり、初層内部には薬師三尊像、釈迦三尊像、阿弥陀三尊像、弥勒三尊像が安置されています。
五重塔の北側には東金堂(国宝)があり、こちらは聖武天皇によって建立されました。現在ある建物は室町時代の建築ですが、内部には本尊である薬師如来像をはじめ、重要文化財や国宝に指定された仏像がずらりと並びます。
東金堂のさらに北側にあるのが国宝館で、興福寺の貴重な文化財が収蔵されています。数ある国宝の中でも必見なのが、元は飛鳥の山田寺にあったという銅造仏頭。白鳳文化を代表する文化財であり、スッと伸びた鼻にふっくらとした頬の輪郭も印象的です。歴史の教科書でも目にしたことがあるという人も多いのではないでしょうか。
そして、国宝館で収蔵されている文化財の中でもとりわけ注目されているのが、やはり阿修羅像でしょう。釈迦を守護する神ともいわれ、三つの端正な顔と、すらりと伸びた六つの手を持つ三面六臂(さんめんろっぴ)のこの像は、奈良時代の天平彫刻の傑作として広く知られています。スマートなシルエットと、美しすぎる腕の配置に見入ってしまう人も多いはず。
平安時代末期には、平家の兵火によって興福寺では多くの堂宇を失ってしまいましたが、奇跡的に焼失を免れたこれらの文化財をじっくりと鑑賞しておきましょう。
境内の中心部にあるのが、2018年に再建された中金堂。もともとは、710(和銅3)年から約7年の歳月をかけて藤原不比等が創建したものでしたが、他の建物と同様に度重なる被災と再建がくり返され、現在は美しい姿に蘇っています。
中金堂の西側には、北円堂(国宝)と南円堂(重要文化財)があり、いずれも美しい八角円堂です。そして見逃してはいけないのが、境内の中でも南西の位置にある三重塔(国宝)。鎌倉時代に建てられたもので、興福寺の中では最古の建物になります。五重塔などに比べると、ややこぢんまりとした印象はあるかもしれませんが、優美な塔と静かに対峙してみるのもいいですよ。