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ナポリ (イタリア) 観光の現地クチコミ

現地のプロ(5人)詳細

Teatro di San Carlo サンカルロ劇場

優・トロペーア (現地在住ブロガー、フリー音楽家)

スカラ座よりも、フェニーチェよりも…。 ヨーロッパ現役最古のオペラ劇場!

  • 歴史的建造物おすすめ
  • ガイドの超イチオシ!
  • 定番人気

“ヨーロッパ中において、このような劇場は存在しない。この劇場の足元に及ぶものも存在しない。たった300日足らずで再建設されたこのホールは、全く革新的賜物である。サンカルロ劇場は、完璧なる法律よりもさらに上をゆくもので、ナポリ国民からの人望も厚くなることを、国王に約束するものである。誰かが石を投げつけようとするも、1つの欠点すら見出せないであろうものが、この劇場である。(ここナポリで貴方が)フェルディナンド4世の話をしようものなら、すぐにこんな反応が返ってくるだろう。「サンカルロ劇場を再建した国王!」と…”

スタンダール『イタリア紀行―1817年のローマ、ナポリ、フィレンツェ』より


『赤と黒』、『パルムの僧院』で知られる作家スタンダールに、このように言わしめたナポリのサンカルロ劇場は、ミラノのスカラ座建立に先立つこと41年、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場には55年も前の、1737年、時のナポリ=シチリア国王カルロ(後のスペイン国王カルロス3世でフェルディナンド4世の父)の命により造られました。

当時のヨーロッパは複雑怪奇な権力闘争に明け暮れており、その中でもナポリは実は重要な位置にありました。度重なる飢饉、貧困、地震、ヴェスヴィオ山の噴火など困難な状況の中、民衆の生活は日々悲惨なものになっていきました。しかも外国(スペイン、オーストリア、そしてまたスペイン)に支配されるという不運と屈辱を味わわねばなりませんでした。それでもナポリの民衆の生活には、不変の様相を示しているものがたくさんありました。その一つが音楽です。

実は、昔から高い水準を誇ってきたナポリの芸術文化は、もちろん音楽でも最上のレベルを誇り、ナポリの流派はイタリア半島内だけではなく、ヨーロッパ全土へ渡っていきました。
スペインの属国とはいえ、ナポリ=シチリア両王国の国王として、1734年に戴冠したカルロは、善政を敷き、文化面でも大いにその力を発揮。既にナポリにはオペラを上演する4つもの劇場があったにも関わらず、カルロはヨーロッパでも類を見ない規模の劇場が必要と考え、ジョヴァンニ・アントニオ・メドラーノ Giovanni Antonio Medranoと、アンジェロ・カラサーレ Angelo Carasale に建築を依頼したのでした。劇場は国王にちなんで、「サン・カルロ」と名がつけられ、8ヶ月と20日という驚くべき速さで竣工しました。

さてこの劇場は、メドラーノの案により馬蹄形となっています。いうなれば半円形になっており、サンカルロ劇場以降のイタリア、またヨーロッパの多くの劇場がこれに倣うようになりました。

6層のバルコニー階席があり、第2層の中央には、見事な王族用バルコニー席が作られました。王族用以外のバルコニーには大きな鏡が設置され、その前には2本の大きな蝋燭が置けるようになっていました。王宮から直通路を使って王や王族が専用バルコニーに来るため、事前に姿が見えません。鏡は彼らの着席を確かめるものでした。また、王・王族よりも先に拍手したり、アンコールを要求したりする無礼を働かないため、彼らの反応を見ることにも使われました。

平土間は奥行28.6メートル、幅22.5メートルに184のバルコニー(内部には6席収容)で、総収容数1379席可能だったようです。

当時の文芸家フランチェスコ・ミリーツィア(劇場一般を批判していた)をして「ヨーロッパ全土で容認し得る18のオペラ劇場の1つ」とまで言わしめたサンカルロ劇場ですが、1816年2月、正に鏡の前の蝋燭が原因で火災が起きてしまいます。再建はすぐに取り掛かられ、アントニオ・ニッコリーニ Antonio Niccolini 指揮の下、1817年には現在見られるような外観で完成しました。この際、内部のホールの天井は、アントニオ、ジョヴァンニ、そしてジュゼッペ・カンマラーノらにより、「軍神ミネルヴァに世界で最も偉大な3人の詩人ダンテ、ウェルギリウス、ホメロスを紹介するアポロ」が描かれています。また、舞台緞帳の上部のアーチには、時計が付けられました。底部ではシレーンが時を示し、羽を付けた人物は芸術を愛でる時間をより長く持つため、時計を遅く進めようとするフィグーラ。左に三美神(詩、音楽、踊りの神)を置き、芸術は時を超越することをここで暗示しています。スタンダールがサンカルロを観たのは正にこの年ですね。

また1834年には、それまでのホール内の主立った色の青金銀(ブルボン家の家色)が、赤と金という、ヨーロッパの劇場のオーセンティックな色に一新されました。

1872年には、ジュゼッペ・ヴェルディの提案で、オーケストラピッチ(オペラやバレエ上演の際、、舞台と客席間に低くした、オーケストラが演奏する場所。それまでは平土間席の端、または両端に位置し、演奏されていた)が設立され、1937年には王宮にも続く庭に面した位置に、フォワイエが増設されました。それも第2次世界大戦下の1943年ナポリへの空襲で破壊されてしまいますが、戦後直ちに修復され、今日見る形になります。

劇場の音響は、その誕生から完璧と評判が非常に高く、それは今日でも変わりません。どの席(プラテア、バルコニー、天井桟敷)からも変わることなく良い響きで聞こえることが特徴です。これらは、ナポリ出身指揮者リッカルド・ムーティ Riccardo Muti によっても証言されています。

サンカルロ劇場で活躍した音楽家達は、初期はレオナルド・レオ Leonardo Leo、ニッコロー・ポルポラ Niccolò Porpora、レオナルド・ヴィンチ Leonardo Vinci、ジョヴァンニ・パイジエッロ Giovanni Paisiello、ドメニコ・サッロ Domenico Sarro ら、ナポリ出身またはナポリの音楽院で学んだ音楽家達が殆どでしたが、のちに、グルック Christoph Willibald Gluckや、ヨハン・クリスティアン・バッハ Johann Christian Bach(大バッハの息子)の外国人によるオペラ作品の上演に見られるように、国際的にも劇場の名がさらに高まってきました。

1800年代に入ると、現代にも名高いイタリアオペラ作曲家、ジョアッキーノ・ロッシーニ Gioacchino Rossini、ガエターノ・ドニゼッティ Gaetano Donizetti らが相次いで劇場の音楽監督に就任します。もちろん彼らの作品がここで上演されたのは言うまでもありません。
一方、ジュゼッペ・ヴェルディ Giuseppe Verdi との関係は最上では無かったものの、やはり彼の作品も上演されています。

しかしながら、サンカルロ劇場はオペラ劇場としての名声は依然高く保ち続けていましたが、1861年のイタリア統一を境に、その優位をミラノのスカラ座に譲ってしまいます。

20世紀前半は、様々な困難に直面しつつも、サンカルロ劇場は尚も偉大な音楽家達の関心を引いて止みません。そして第2次世界大戦後、イタリア国内では実に最初に活動を再開した劇場だったのです。

1950年以降は、バルコニー席の改良修復を始め、平土間の座席1つ1つの下に空気穴をつけ、空調に配慮したり(ナポリの気候を鑑みて)、あらゆる革新的修復が成されました。その甲斐あってか、1990年にはカルル・オルフ Carl Orff の作品『カルミナ・ブラーナ Carmina Burana』が上演されましたし、2009年に行われた5ヶ月をかけた再度の修復工事後には、ベンジャミン・ブリテン Benjamin Britten の『ピーター・グライムス Peter Grimes 』が1つ目の演目として上演されました。
サンカルロ劇場で観客を酔わせた歌手達は、三大テノール(ルチャーノ・パヴァロッティ、プラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラス)はもちろん、古くはティート・スキアーパ Tito Schiapa、エンリコ・カルーゾEnrico Caruso、アルフレード・クラウス Alfredo Kraus、レナータ・ティバルディ Renata Tibaldi、マリア・カラス Maria Callas、ジュリエッタ・シミオナート Giulietta Simionato 、レオ・ヌッチ Leo Nucci など。また、器楽奏者では ヤッシャ・ハイフェッツ Jascha Heifetz、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ Arturo Benedetti Michelangeli、アルトゥール・ルビンスタイン Arthur Rubinstein、指揮者には、アルトゥーロ・トスカニーニ Arturo Toscanini、イゴル・フョドロヴィッチ・ストラヴィンスキー Igor Fedrovic Stravinskij、レオナルド・バーンスタインLeonard Bernstein、ヘルベルト・フォン・カラヤン Herbert von Karajan、ジュゼッペ・シノーポリ Giuseppe Sinopoli、クラウディオ・アッバード Claudio Abbado ら、書ききれないくらいの錚々たる面々がリストに名を連ねます。

このように、その誕生から今日まで世界中の著名音楽家達の演奏やオペラ上演で引きも切らないサンカルロ劇場ですが、実はバレエの保護にも大きく貢献しています。

まだ、この劇場誕生以前、オペラ上演には真面目な内容のオペラ(オペラ・セーリア)の幕間には、観客に一息つかせるために、コメディ要素の強い短いオペラを上演(インテルメッツォ)するのが当時の習慣となっていました。この習慣を取り除き、代わりにオペラの本筋に沿ったバレエの一幕を入れるように、国王カルロは命じました。この新しい習慣はサンカルロ劇場でのオペラ上演でも引き継がれ、さらにはバレエだけの独立した作品が上演されるようになりました。サンカルロ劇場そのものの名声と共に、このバレエ作品上演の評判はヨーロッパ中に広まっていったのです。そのうち、今日に見られるような、バレエで以って物語を演じる形の作品を、当時のサンカルロ劇場や、ヨーロッパの主要都市で活躍していたナポリの作曲家で舞踊家のサルヴァトーレ・ヴィガノーSalvatore Viganoが考案。サンカルロ劇場には、名高い振付家が集まるようになりました。そして1812年、サンカルロ劇場にイタリアで最初のバレエ学校が設立されたのでした。その後バレエの上演は、特に19世紀終わりから20世紀にかけて多くの困難にぶつかってきましたが、無事に乗り越えてきました。第二次世界大戦後には、サンカルロのバレエ・アカデミーとして名声を再び取り戻し、世界的著名舞踊家 (マルゴー・フォンティン Margot Fonteyn、カルラ・フラッチ Carla Fracci、ルドルフ・ヌレイエフ Rudolf Nureyevなど)を招聘しました。現在もバレエ上演は劇場の催しの大きな一端を担っています。

以上のように、劇場の歴史を手繰ると、ナポリの疲弊から立ち直ることに尽力したカルロ国王は、今日にも繋がる、サンカルロ劇場という大きな種を蒔いたかのようです。

1980年のナポリの震災で受けた被害を修復するために、劇場のあちこちを調査していた美術チームは、舞台を象るアーチの上にあるサヴォイア家の紋章の金色が少し剥がれていることに気づきました(イタリア統一の際のサヴォイア家の指示によるもの)。それだけではなく、その下に別の色があることに気づいたのです。

塗られた金を慎重に剥がしていくと、そこにあったのは、カルロ国王出身ボルボーネ家の、ナポリ=シチリア両国王家としての紋章でした。カルロの血に流れるブルボン家、ファルネーゼ家、ハプスブルク家、アラゴン家など、27の紋章を全て楕円形に集めた、何とも賑やかなデザインです。この修復には、個人的には何か国王カルロに対する、ナポリ人の親愛を感じます。

ナポリ=シチリア両王国王家の紋章は舞台上から、王族用バルコニーの上に輝くサヴォイア家紋章と静かに対峙し、しみじみと歴史の流れを感じさせる存在です。

<周辺エリア情報について>
劇場の向かって右手にピアッツァ・トリエステ・エ・トレント Piazza Grieste e Trentoが、ピアッツァを隔てて更に右手には、歴史あるカフェテリア・ガンブリーヌス Gambrinusが。そこからはプレビシート広場 Piazza plebiscito が広がり、王宮 Palazzo reale の入り口もあります。また、ショッピングに適したキアイア通り Via Chiaia や、ローマ通り Via Roma にもすぐです。劇場の前には、ウンベルトI世のガレリアがあります。

食事をするのにも便利な場所で、劇場の前には、「ナポリ・イン・ボッカ Napoli in bocca」があり、美味しいピッツァが堪能出来ますよ。

なお車でお越しの場合、劇場の駐車場はありません。近くに提携駐車場があるのでそこを利用推奨。
→Supergarage Srl., 住所: Via Shelley 11、tel: +39.0815530104 1時間につき2ユーロ

<劇場ガイド付き見学について>
月〜土: 10:30、11:30、12:30、14:30、15:30、16:30
日・祝日: 10:30、11:30、12:30
sito: http://www.teatrosancarlo.it/it/pages/visite-guidate.html
mail: promozionepubblico@teatrosancarlo.it , visiteguidate@teatrosancarlo.it
tel: +39-81-7972412 (予約のインフォメーションなどはこちら)
料金: 一般 9ユーロ、30歳未満60歳以上 7ユーロ、10歳以下 4ユーロ
言語: イタリア語が主。1日のうちに2度ほど、英語・仏語メインでのガイドツアーもありますが、現地にての確認を推奨します(季節によって変わるため)。日本語はありません。
写真撮影: 基本的に撮影自由

<劇場博物館 Memusについて>
月-土: 9:00〜19:00、日:9:00〜15:00
料金: 一般6ユーロ、30歳未満60歳以上 5ユーロ、10歳以下4ユーロ

2018/09訪問
  • ジャンル
    劇場・ホール
  • エリア
    ナポリ ヒストリック センター
  • 住所
  • アクセス
    地下鉄1号線 トレド Toledo駅から徒歩約約8分、ナポリ中央 Napoli Centrale駅からR2 サンカルロ San Carloバス停下車、メルジェッリーナ Mergellina駅からR3ピアッツァ ムニチーピオ piazza municipioバス停下車
  • 電話番号
    +39-081-797246812
  • 営業時間
    チケットオフィス - 10:00-18:00, ガイドツアー - 10:30-16:30
  • 定休日
    イベントにより異なる
  • 予算
    入場料(一般) 9ユーロ
    入場料(30歳未満60歳以上) 7ユーロ
    入場料(10歳以下) 4ユーロ
  • 上記の記事は、訪問時点の情報を元に作成しています。訪問先の都合や現地事情により、最新の情報とは異なる可能性がありますのでご了承ください。