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- 書籍・CD・DVD
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表題の作品を読みました。
以下にその感想です。
『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』
李龍徳[イ・ヨンドク](河出書房新社)
これは4年ほど前に読んだ純文学のほうの作品だが、感想を出そうかどうしようか迷っているうちに年が過ぎてしまった。でも最近になって文庫版が出たようである。
実はこの前にも同じ発想の作品を読んでいて、それが嶽本野ばらの『純愛』(新潮社)であった。何が共通かというと、両方とも
テロリストの犯行以前を描いている。
ということで、これならSRの会員でも「気分転換に純文学でも読もうか」と思ったとき楽しめるのではないかと考えたものの、結局、お蔵入りになっていたのを、現実が作品に追いついてきたので今頃になってアップします。^^
さて、いよいよ日本でも初の女性首相が誕生のようだが、実はこの作品でも日本初の女性首相が誕生しており、しかもその人が実は極右で「進歩的」な法律とコリアンヘイト法を通していく。そして締め付けられていく在日同胞の窮状と日本の現状を打開すべく、ついに在日三世の柏木太一が立ち上がる、というのが物語の本筋である。
さて、柏木は何かを企んでいるのだが、本人は「賢く戦う」と言っていて、それがどのようなものかが「謎」として物語全体を覆っている。そしてシンという武術の達人をはじめ、柏木の目的に合致する特技や性格の持ち主が集められていく。まるで「七人の侍」のようである。その計画は人の命を奪うものらしいのだが、何かが少し違うのだ。彼は一体何を企んでいるのか?
目的のために集められる人物たちや柏木の周りの人たちの生き様がしっかりと描かれ、この辺がエンタテインメントと純文学の違いか、読んでいて鬱陶しくないし、退屈しない。サイドストーリーもそれだけで中編をひとつ書けそうなネタである。
そして、いよいよクライマックス、柏木の真の計画が明らかになると私は「!?」と思ってしまった。斬新といえば斬新だし、回りくどいといえば回りくどい。どっちにしても「凄いなあ」と思った次第。
まあ、日本人から見ればテロリストだが、在日から見ればレジスタンスなのだろう。在日の残虐行為も普通に書いてあって、不思善悪なのかもしれない。
結末で柏木の計画は成功するものの想定外の事件が起きて……と、これは書かない方が良いだろう。
この作品で残念なのは非常に個性的で面白い女性首相が物語には登場しないことである。この人が一番興味深いのに。地の文でチョロッと出るだけ。ここがイマイチであるな。
ついでにもう一作、嶽本野ばらの『純愛』だが、エキセントリックな登場人物たちの普通の日常をじっくりと描き、テロに至る過程をたどっていくのだが、ちょっと長いので少しだけしんどかった。^^
読みごたえはあったけれど、最後のテロを実行に移すところがあまりにも唐突で、何か木に竹を接いだような感じになってしまったのが惜しい。
でも、最後まで読めたから、良い作品である。
ミステリを読むのに疲れたかなと思ったとき、気分転換にこんなのを読んでみるのも一興ではないでしょうか。
http://sealedroom.blog.jp
以下にその感想です。
『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』
李龍徳[イ・ヨンドク](河出書房新社)
これは4年ほど前に読んだ純文学のほうの作品だが、感想を出そうかどうしようか迷っているうちに年が過ぎてしまった。でも最近になって文庫版が出たようである。
実はこの前にも同じ発想の作品を読んでいて、それが嶽本野ばらの『純愛』(新潮社)であった。何が共通かというと、両方とも
テロリストの犯行以前を描いている。
ということで、これならSRの会員でも「気分転換に純文学でも読もうか」と思ったとき楽しめるのではないかと考えたものの、結局、お蔵入りになっていたのを、現実が作品に追いついてきたので今頃になってアップします。^^
さて、いよいよ日本でも初の女性首相が誕生のようだが、実はこの作品でも日本初の女性首相が誕生しており、しかもその人が実は極右で「進歩的」な法律とコリアンヘイト法を通していく。そして締め付けられていく在日同胞の窮状と日本の現状を打開すべく、ついに在日三世の柏木太一が立ち上がる、というのが物語の本筋である。
さて、柏木は何かを企んでいるのだが、本人は「賢く戦う」と言っていて、それがどのようなものかが「謎」として物語全体を覆っている。そしてシンという武術の達人をはじめ、柏木の目的に合致する特技や性格の持ち主が集められていく。まるで「七人の侍」のようである。その計画は人の命を奪うものらしいのだが、何かが少し違うのだ。彼は一体何を企んでいるのか?
目的のために集められる人物たちや柏木の周りの人たちの生き様がしっかりと描かれ、この辺がエンタテインメントと純文学の違いか、読んでいて鬱陶しくないし、退屈しない。サイドストーリーもそれだけで中編をひとつ書けそうなネタである。
そして、いよいよクライマックス、柏木の真の計画が明らかになると私は「!?」と思ってしまった。斬新といえば斬新だし、回りくどいといえば回りくどい。どっちにしても「凄いなあ」と思った次第。
まあ、日本人から見ればテロリストだが、在日から見ればレジスタンスなのだろう。在日の残虐行為も普通に書いてあって、不思善悪なのかもしれない。
結末で柏木の計画は成功するものの想定外の事件が起きて……と、これは書かない方が良いだろう。
この作品で残念なのは非常に個性的で面白い女性首相が物語には登場しないことである。この人が一番興味深いのに。地の文でチョロッと出るだけ。ここがイマイチであるな。
ついでにもう一作、嶽本野ばらの『純愛』だが、エキセントリックな登場人物たちの普通の日常をじっくりと描き、テロに至る過程をたどっていくのだが、ちょっと長いので少しだけしんどかった。^^
読みごたえはあったけれど、最後のテロを実行に移すところがあまりにも唐突で、何か木に竹を接いだような感じになってしまったのが惜しい。
でも、最後まで読めたから、良い作品である。
ミステリを読むのに疲れたかなと思ったとき、気分転換にこんなのを読んでみるのも一興ではないでしょうか。
http://sealedroom.blog.jp


