記事一覧
1 - 5件目まで(6件中)

- 大山誠一郎の『死の絆』を読みました。
-
エリア:
-
指定なし
- テーマ:書籍・CD・DVD
- 投稿日:2026/02/04 15:05
- コメント(0)
表題の作品を読みました。以下にその感想です。
『死の絆』
大山誠一郎(文藝春秋)
「赤い博物館」シリーズの三冊目。緋色冴子警視と寺田聡巡査部長のコンビももうお馴染みだが、今回は「異色作」もひとつ含まれている。
第1話「三十年目の自首」
犯行後30年も経ってから自首してきた男の意図は一体何なのか、という謎なのだが、残念ながら私はこの男に弟がいるという話が出た所で仕掛けの大筋が見えてしまった。しかも最後のオチまで分かってしまったのである。
大山誠一郎、破れたり。^^
第2話「名前の無い脅迫者」
冒頭の犯行シーンから読者を引っ掛けようとする作品だが、これが上手くいっている。私は騙された。^_^
思い込みを利用したトリックで、「おお、なるほどそうだったのか」と思ってしまう。
第3話「3匹の子ヤギ」
コンビニに立てこもった犯人が最後は「自殺」するのだが、これも真相は想像がついてしまった。
実は、ここまで読んで「このシリーズも勢いが弱って来たのか」と思ったのだが、次で巻き返すのだな。
第4話「掘り出された罪」
冒頭の犯行シーンで犯人は凶器のナイフをシャツにくるんで工事現場のコンクリートを流し込む地所に埋めた。それが18年ほどたってから掘り出されDNA鑑定の結果、警視庁の特命捜査対策室が再捜査することになったのだが、何とこの対策室の係長が緋色冴子に挑戦するのである。「あなたと再捜査を競ってみたい」と。
シリーズ初の推理合戦である。
もちろん多重推理で間違いの解決と正しい解決があるわけだ。間違いの方は私も想像したのだが、緋色冴子によって明かされる真相はシリーズ中の白眉とも言うべきものであった。何といっても長編でも使えるトリックを惜しげもなく使っている。シリーズ初の長編作品にしても良かったと思う。冒頭の犯行シーンもミスディレクションに一役買っているし、題名にも二つの意味がある。
本書の裏表紙に「シリーズ最高傑作」と記してあるが、3冊の中でこの本が最高なのではなく、3冊に収録された作品の中でこれが最高というのならその通りだと思う。短編ミステリのお手本のようになっている。
第5話「死の絆」
ホームレスと著名な国会議員が一緒に殺されるという不可解な事件の謎に緋色冴子が挑むのだが、冴子さんはアッと言う間に真相を見抜いたようで、凄いなあと思ってしまった。^^
第6話「春は紺色」
これはシリーズ中の異色作。
『赤い博物館』の「死に至る問い」に登場した兵頭警視正と偶然に再開した寺田聡は兵頭から冴子が警察大学時代に解決した事件の話を聞く。
警察大学の寮内で起きた奇妙な盗難事件、眼鏡とアイロンが盗まれるという珍事に冴子が指摘した真相は……男社会の警察大学の寮で男たちがたむろしている部屋に突然現れた冴子が真相を語る姿はまさに「神の立ち位置」ではないかと思わせるものがある。
冴子さんって、若い頃からこうだったのですね。変わっていないのである。これも凄い。栴檀は双葉より芳し、である。
http://sealedroom.blog.jp
『死の絆』
大山誠一郎(文藝春秋)
「赤い博物館」シリーズの三冊目。緋色冴子警視と寺田聡巡査部長のコンビももうお馴染みだが、今回は「異色作」もひとつ含まれている。
第1話「三十年目の自首」
犯行後30年も経ってから自首してきた男の意図は一体何なのか、という謎なのだが、残念ながら私はこの男に弟がいるという話が出た所で仕掛けの大筋が見えてしまった。しかも最後のオチまで分かってしまったのである。
大山誠一郎、破れたり。^^
第2話「名前の無い脅迫者」
冒頭の犯行シーンから読者を引っ掛けようとする作品だが、これが上手くいっている。私は騙された。^_^
思い込みを利用したトリックで、「おお、なるほどそうだったのか」と思ってしまう。
第3話「3匹の子ヤギ」
コンビニに立てこもった犯人が最後は「自殺」するのだが、これも真相は想像がついてしまった。
実は、ここまで読んで「このシリーズも勢いが弱って来たのか」と思ったのだが、次で巻き返すのだな。
第4話「掘り出された罪」
冒頭の犯行シーンで犯人は凶器のナイフをシャツにくるんで工事現場のコンクリートを流し込む地所に埋めた。それが18年ほどたってから掘り出されDNA鑑定の結果、警視庁の特命捜査対策室が再捜査することになったのだが、何とこの対策室の係長が緋色冴子に挑戦するのである。「あなたと再捜査を競ってみたい」と。
シリーズ初の推理合戦である。
もちろん多重推理で間違いの解決と正しい解決があるわけだ。間違いの方は私も想像したのだが、緋色冴子によって明かされる真相はシリーズ中の白眉とも言うべきものであった。何といっても長編でも使えるトリックを惜しげもなく使っている。シリーズ初の長編作品にしても良かったと思う。冒頭の犯行シーンもミスディレクションに一役買っているし、題名にも二つの意味がある。
本書の裏表紙に「シリーズ最高傑作」と記してあるが、3冊の中でこの本が最高なのではなく、3冊に収録された作品の中でこれが最高というのならその通りだと思う。短編ミステリのお手本のようになっている。
第5話「死の絆」
ホームレスと著名な国会議員が一緒に殺されるという不可解な事件の謎に緋色冴子が挑むのだが、冴子さんはアッと言う間に真相を見抜いたようで、凄いなあと思ってしまった。^^
第6話「春は紺色」
これはシリーズ中の異色作。
『赤い博物館』の「死に至る問い」に登場した兵頭警視正と偶然に再開した寺田聡は兵頭から冴子が警察大学時代に解決した事件の話を聞く。
警察大学の寮内で起きた奇妙な盗難事件、眼鏡とアイロンが盗まれるという珍事に冴子が指摘した真相は……男社会の警察大学の寮で男たちがたむろしている部屋に突然現れた冴子が真相を語る姿はまさに「神の立ち位置」ではないかと思わせるものがある。
冴子さんって、若い頃からこうだったのですね。変わっていないのである。これも凄い。栴檀は双葉より芳し、である。
http://sealedroom.blog.jp

- 山口未桜の『白魔の檻』を読みました。
-
エリア:
-
指定なし
- テーマ:書籍・CD・DVD その他 歴史・文化・芸術
- 投稿日:2025/11/06 14:49
- コメント(0)
表題の作品を読みました。以下にその感想です。
『白魔の檻』
山口未桜(東京創元社)
クローズドサークル物の本格ミステリだが、濃霧に閉ざされた上に地震が来て、さらに硫化水素が押し寄せて来るという三連発である。今やひとつだけではインパクトが無いのかもしれない。
舞台は北海道の過疎地にある病院で、そこに城崎響介は過疎地医療協力の医師として、春田芽衣は研修医としてやって来る。濃霧の中、どうにか病院にたどり着いた二人を待っていたのは病院スタッフの変死事件であった。これを発端に、霧と余震と有毒ガスに見舞われながら連続殺人の謎を解くというストーリーなのだから、読まない手はない。
前半は究極のシチュエーションを際立たせるためか、パニック小説の色合いが濃いが、後半はバリバリの本格ミステリになっている。途中でカルテに記載されている内容など、ややこしい医学用語が連続して出る部分もあるのだが、わりとスラスラと読めた。ひょっとしたら、難しい所は無意識に流し読みをしていたのかもしれない。
有毒ガスが病院内に少しずつ上って来て、入院患者を上の階に移さなければならないなど、極限状況での医療活動も描かれるが、結末に近づくにつれてミステリ感が濃くなるとパニック感が薄れるのは仕方ないだろう。そもそも本格ミステリが読みたいわけだ。
ラストの病院の屋上での謎解きと犯人との対決まで読み終えて、この作品は今年のベストテン候補だと思った。
読んでみてください。^^
http://sealedroom.blog.jp
『白魔の檻』
山口未桜(東京創元社)
クローズドサークル物の本格ミステリだが、濃霧に閉ざされた上に地震が来て、さらに硫化水素が押し寄せて来るという三連発である。今やひとつだけではインパクトが無いのかもしれない。
舞台は北海道の過疎地にある病院で、そこに城崎響介は過疎地医療協力の医師として、春田芽衣は研修医としてやって来る。濃霧の中、どうにか病院にたどり着いた二人を待っていたのは病院スタッフの変死事件であった。これを発端に、霧と余震と有毒ガスに見舞われながら連続殺人の謎を解くというストーリーなのだから、読まない手はない。
前半は究極のシチュエーションを際立たせるためか、パニック小説の色合いが濃いが、後半はバリバリの本格ミステリになっている。途中でカルテに記載されている内容など、ややこしい医学用語が連続して出る部分もあるのだが、わりとスラスラと読めた。ひょっとしたら、難しい所は無意識に流し読みをしていたのかもしれない。
有毒ガスが病院内に少しずつ上って来て、入院患者を上の階に移さなければならないなど、極限状況での医療活動も描かれるが、結末に近づくにつれてミステリ感が濃くなるとパニック感が薄れるのは仕方ないだろう。そもそも本格ミステリが読みたいわけだ。
ラストの病院の屋上での謎解きと犯人との対決まで読み終えて、この作品は今年のベストテン候補だと思った。
読んでみてください。^^
http://sealedroom.blog.jp

- ディーヴァー&マルドナードの『スパイダー・ゲーム』を読みました。
-
エリア:
-
指定なし
- テーマ:書籍・CD・DVD その他
- 投稿日:2025/11/04 13:40
- コメント(0)
『スパイダー・ゲーム』
ジェフリー・ディーヴァー
イザベラ・マルドナード(文藝春秋)
意外にもジェフリー・ディーヴァーが別の作家と合作をしたという作品だが、小説としてはディーヴァーの個性が勝っている。とは言うものの、私はイザベラ・マルドナードの小説は読んだことが無い。さて?
ミッシングリングの連続殺人のように見える殺人事件が起きて、その繋がりが分かったように見せかけて、さらに裏があるわけだが、この犯人のトリックは有名な前例がある。それにあの秘密を守るために人殺しまでするかという疑問もある。と、これだけを言うとまるで凡作のように聞こえるだろうが、これ中々面白く読めた。流石はディーヴァーだと思う。
どのように合作したのかは分からないが、このところディーヴァーの作品は全盛期に比べると少し弱っていたので、マルドナードに助けてもらった?
まあ、根拠のない詮索は止めておくに越したことはない。^^
連邦捜査官カーメン・サンチェスとサイバー犯罪専門家ジェイク・ヘロンがスケールの大きい計画を立てた殺し屋チームと戦うのだが、私は普通の常識的な殺し屋ならあんな壮大な計画は立てずに、ありきたりの事故に見せかけて殺すのではないかと思う。そのほうが完全犯罪になっただろうに、このあたりの小説としての説得力が弱い。
文藝春秋もそれを感じたのが、ハードカバーではなく文庫本で出し、分冊にせず一冊本にしてくれた。例年のディーヴァー作品より半額ぐらいで買えるのが嬉しい。ツッコミどころはあっても読まない手はないだろう。
何といっても411頁の展開は「おお、ディーヴァーだ!」というものだし、507頁で分かる事実も「おお、ディーヴァーだ!」という設定である。
さらにディーヴァーらしいのは、ニコンのカメラは出て来る、ニッサンの車は出て来る、スーパーコンピューター富嶽は出て来る、シェフは日本製のナイフ(包丁)セットを愛用しているし、プロジェクトX(但しNHKの番組ではない)という言葉も出て来る。
最後の修羅場で天才的サイバー犯罪者だけは上手く逃げおおせたので、こいつはまたこのシリーズに出て来るのだろうと思ったら……なるほど、こう来るか。少しあっけなかったが、ハッピーエンドになった。
次回作以降に持ち越された新たな謎(コルター・ショウのシリーズのと似ているけれど)も提出されたので、今後これがどう絡んで来るかも興味のあるところ。文庫本ですから、読んでみてください。
【蛇足】主人公の女性捜査官はラテン系の人なので名前は「カーメン」ではなく「カルメン」の方が妥当だと思うのだが。。。
カーメンだとツタンカーメンの顔をを思い浮かべてしまう。^^
http://sealedroom.blog.jp
ジェフリー・ディーヴァー
イザベラ・マルドナード(文藝春秋)
意外にもジェフリー・ディーヴァーが別の作家と合作をしたという作品だが、小説としてはディーヴァーの個性が勝っている。とは言うものの、私はイザベラ・マルドナードの小説は読んだことが無い。さて?
ミッシングリングの連続殺人のように見える殺人事件が起きて、その繋がりが分かったように見せかけて、さらに裏があるわけだが、この犯人のトリックは有名な前例がある。それにあの秘密を守るために人殺しまでするかという疑問もある。と、これだけを言うとまるで凡作のように聞こえるだろうが、これ中々面白く読めた。流石はディーヴァーだと思う。
どのように合作したのかは分からないが、このところディーヴァーの作品は全盛期に比べると少し弱っていたので、マルドナードに助けてもらった?
まあ、根拠のない詮索は止めておくに越したことはない。^^
連邦捜査官カーメン・サンチェスとサイバー犯罪専門家ジェイク・ヘロンがスケールの大きい計画を立てた殺し屋チームと戦うのだが、私は普通の常識的な殺し屋ならあんな壮大な計画は立てずに、ありきたりの事故に見せかけて殺すのではないかと思う。そのほうが完全犯罪になっただろうに、このあたりの小説としての説得力が弱い。
文藝春秋もそれを感じたのが、ハードカバーではなく文庫本で出し、分冊にせず一冊本にしてくれた。例年のディーヴァー作品より半額ぐらいで買えるのが嬉しい。ツッコミどころはあっても読まない手はないだろう。
何といっても411頁の展開は「おお、ディーヴァーだ!」というものだし、507頁で分かる事実も「おお、ディーヴァーだ!」という設定である。
さらにディーヴァーらしいのは、ニコンのカメラは出て来る、ニッサンの車は出て来る、スーパーコンピューター富嶽は出て来る、シェフは日本製のナイフ(包丁)セットを愛用しているし、プロジェクトX(但しNHKの番組ではない)という言葉も出て来る。
最後の修羅場で天才的サイバー犯罪者だけは上手く逃げおおせたので、こいつはまたこのシリーズに出て来るのだろうと思ったら……なるほど、こう来るか。少しあっけなかったが、ハッピーエンドになった。
次回作以降に持ち越された新たな謎(コルター・ショウのシリーズのと似ているけれど)も提出されたので、今後これがどう絡んで来るかも興味のあるところ。文庫本ですから、読んでみてください。
【蛇足】主人公の女性捜査官はラテン系の人なので名前は「カーメン」ではなく「カルメン」の方が妥当だと思うのだが。。。
カーメンだとツタンカーメンの顔をを思い浮かべてしまう。^^
http://sealedroom.blog.jp

- 李龍徳の『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』を読みました。
-
エリア:
-
指定なし
- テーマ:書籍・CD・DVD 歴史・文化・芸術
- 投稿日:2025/10/08 14:06
- コメント(0)
表題の作品を読みました。
以下にその感想です。
『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』
李龍徳[イ・ヨンドク](河出書房新社)
これは4年ほど前に読んだ純文学のほうの作品だが、感想を出そうかどうしようか迷っているうちに年が過ぎてしまった。でも最近になって文庫版が出たようである。
実はこの前にも同じ発想の作品を読んでいて、それが嶽本野ばらの『純愛』(新潮社)であった。何が共通かというと、両方とも
テロリストの犯行以前を描いている。
ということで、これならSRの会員でも「気分転換に純文学でも読もうか」と思ったとき楽しめるのではないかと考えたものの、結局、お蔵入りになっていたのを、現実が作品に追いついてきたので今頃になってアップします。^^
さて、いよいよ日本でも初の女性首相が誕生のようだが、実はこの作品でも日本初の女性首相が誕生しており、しかもその人が実は極右で「進歩的」な法律とコリアンヘイト法を通していく。そして締め付けられていく在日同胞の窮状と日本の現状を打開すべく、ついに在日三世の柏木太一が立ち上がる、というのが物語の本筋である。
さて、柏木は何かを企んでいるのだが、本人は「賢く戦う」と言っていて、それがどのようなものかが「謎」として物語全体を覆っている。そしてシンという武術の達人をはじめ、柏木の目的に合致する特技や性格の持ち主が集められていく。まるで「七人の侍」のようである。その計画は人の命を奪うものらしいのだが、何かが少し違うのだ。彼は一体何を企んでいるのか?
目的のために集められる人物たちや柏木の周りの人たちの生き様がしっかりと描かれ、この辺がエンタテインメントと純文学の違いか、読んでいて鬱陶しくないし、退屈しない。サイドストーリーもそれだけで中編をひとつ書けそうなネタである。
そして、いよいよクライマックス、柏木の真の計画が明らかになると私は「!?」と思ってしまった。斬新といえば斬新だし、回りくどいといえば回りくどい。どっちにしても「凄いなあ」と思った次第。
まあ、日本人から見ればテロリストだが、在日から見ればレジスタンスなのだろう。在日の残虐行為も普通に書いてあって、不思善悪なのかもしれない。
結末で柏木の計画は成功するものの想定外の事件が起きて……と、これは書かない方が良いだろう。
この作品で残念なのは非常に個性的で面白い女性首相が物語には登場しないことである。この人が一番興味深いのに。地の文でチョロッと出るだけ。ここがイマイチであるな。
ついでにもう一作、嶽本野ばらの『純愛』だが、エキセントリックな登場人物たちの普通の日常をじっくりと描き、テロに至る過程をたどっていくのだが、ちょっと長いので少しだけしんどかった。^^
読みごたえはあったけれど、最後のテロを実行に移すところがあまりにも唐突で、何か木に竹を接いだような感じになってしまったのが惜しい。
でも、最後まで読めたから、良い作品である。
ミステリを読むのに疲れたかなと思ったとき、気分転換にこんなのを読んでみるのも一興ではないでしょうか。
http://sealedroom.blog.jp
以下にその感想です。
『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』
李龍徳[イ・ヨンドク](河出書房新社)
これは4年ほど前に読んだ純文学のほうの作品だが、感想を出そうかどうしようか迷っているうちに年が過ぎてしまった。でも最近になって文庫版が出たようである。
実はこの前にも同じ発想の作品を読んでいて、それが嶽本野ばらの『純愛』(新潮社)であった。何が共通かというと、両方とも
テロリストの犯行以前を描いている。
ということで、これならSRの会員でも「気分転換に純文学でも読もうか」と思ったとき楽しめるのではないかと考えたものの、結局、お蔵入りになっていたのを、現実が作品に追いついてきたので今頃になってアップします。^^
さて、いよいよ日本でも初の女性首相が誕生のようだが、実はこの作品でも日本初の女性首相が誕生しており、しかもその人が実は極右で「進歩的」な法律とコリアンヘイト法を通していく。そして締め付けられていく在日同胞の窮状と日本の現状を打開すべく、ついに在日三世の柏木太一が立ち上がる、というのが物語の本筋である。
さて、柏木は何かを企んでいるのだが、本人は「賢く戦う」と言っていて、それがどのようなものかが「謎」として物語全体を覆っている。そしてシンという武術の達人をはじめ、柏木の目的に合致する特技や性格の持ち主が集められていく。まるで「七人の侍」のようである。その計画は人の命を奪うものらしいのだが、何かが少し違うのだ。彼は一体何を企んでいるのか?
目的のために集められる人物たちや柏木の周りの人たちの生き様がしっかりと描かれ、この辺がエンタテインメントと純文学の違いか、読んでいて鬱陶しくないし、退屈しない。サイドストーリーもそれだけで中編をひとつ書けそうなネタである。
そして、いよいよクライマックス、柏木の真の計画が明らかになると私は「!?」と思ってしまった。斬新といえば斬新だし、回りくどいといえば回りくどい。どっちにしても「凄いなあ」と思った次第。
まあ、日本人から見ればテロリストだが、在日から見ればレジスタンスなのだろう。在日の残虐行為も普通に書いてあって、不思善悪なのかもしれない。
結末で柏木の計画は成功するものの想定外の事件が起きて……と、これは書かない方が良いだろう。
この作品で残念なのは非常に個性的で面白い女性首相が物語には登場しないことである。この人が一番興味深いのに。地の文でチョロッと出るだけ。ここがイマイチであるな。
ついでにもう一作、嶽本野ばらの『純愛』だが、エキセントリックな登場人物たちの普通の日常をじっくりと描き、テロに至る過程をたどっていくのだが、ちょっと長いので少しだけしんどかった。^^
読みごたえはあったけれど、最後のテロを実行に移すところがあまりにも唐突で、何か木に竹を接いだような感じになってしまったのが惜しい。
でも、最後まで読めたから、良い作品である。
ミステリを読むのに疲れたかなと思ったとき、気分転換にこんなのを読んでみるのも一興ではないでしょうか。
http://sealedroom.blog.jp

- 方丈貴恵の『アミュレット・ワンダーランド』を読みました。
-
エリア:
-
指定なし
- テーマ:書籍・CD・DVD その他 歴史・文化・芸術
- 投稿日:2025/09/25 13:38
- コメント(0)
『アミュレット・ワンダーランド』
方丈貴恵(光文社)
2年前に出た『アミュレット・ホテル』の続編だが、前作を読んでいない人や「読んだけど忘れた」という人のために説明しておくと、アミュレット・ホテルというのは、本館は普通のホテルなのだが、会員制の別館は犯罪者専用になっているホテルである。そこで起きる事件の顛末を描くわけだが、登場人物のほとんど全部が犯罪者である。そこで起きる事件をホテル探偵の桐生が解決するわけだ。
Episode1「ドゥ・ノット・ディスターブ」
冒頭、ホテルのラウンジで盗難事件が起きるのだが、実はこれは本筋ではない。このプロローグ的な事件が解決した直後、殺人事件が発生する。
ホテルの一室から犯罪者向け動画共有サービス「シン・チューブ」のライヴ配信中だった犯罪者が殺されてしまう。有名な泥棒兄弟の末弟だった被害者は果たして兄に殺されたのか?
本格ミステリへのオマージュも散りばめられた一編だが、全てが明らかになると冒頭の事件も単なるプロローグではなかったこと分かる。巻頭を飾るに相応しい作品といえよう。
Episode2「落とし物合戦」
ラウンジのピアノの中に「落とし物」を見つけたという届け出があり、さらに自分が落とし主だという犯罪者が3人もやって来る。さて、どうなる?
Episode3「ようこそ殺し屋コンペへ」
アミュレット・ホテル別館で殺し屋コンペが行われるが、もちろんホテルに許可など取っていない。さらにこのコンペの標的にされたのがホテルのフロント係・水田であった。しかし次々と殺されて行くのはコンペに参加した殺し屋たち。水田の犯罪者としての過去も明かされ、最後は犯罪的にハッピーエンドになる。
Episode4「ボマーの殺人」
日本の詐欺王の一人息子とイタリア系犯罪組織「エピテル」の幹部の娘がアミュレット・ホテルで結婚式を挙げた。その披露宴の会場に爆弾が仕掛けられ、犯人はアミュレット・ホテルの所有権を要求。制限時間までに起爆を解除するコード番号を入力しないと大爆発が起きる。
犯人によって高層階と低層階が分断され、ホテル探偵の桐生は低層階で起きた殺人を解決して犯人から解除の番号を聞き出さなければならない。そして、被害者もコード番号を教えるダイイングメッセージを残していた。タイムリミットまでにその謎が解けるかという一編で、本書の締め括りにふさわしい内容である。
四編とも過不足ない仕上がりで、私は一気読みしてしまった。前作を読んでいないという方は、是非この機会に『アミュレット・ホテル』のほうも読んでいただきたい。^^
http://sealedroom.blog.jp
方丈貴恵(光文社)
2年前に出た『アミュレット・ホテル』の続編だが、前作を読んでいない人や「読んだけど忘れた」という人のために説明しておくと、アミュレット・ホテルというのは、本館は普通のホテルなのだが、会員制の別館は犯罪者専用になっているホテルである。そこで起きる事件の顛末を描くわけだが、登場人物のほとんど全部が犯罪者である。そこで起きる事件をホテル探偵の桐生が解決するわけだ。
Episode1「ドゥ・ノット・ディスターブ」
冒頭、ホテルのラウンジで盗難事件が起きるのだが、実はこれは本筋ではない。このプロローグ的な事件が解決した直後、殺人事件が発生する。
ホテルの一室から犯罪者向け動画共有サービス「シン・チューブ」のライヴ配信中だった犯罪者が殺されてしまう。有名な泥棒兄弟の末弟だった被害者は果たして兄に殺されたのか?
本格ミステリへのオマージュも散りばめられた一編だが、全てが明らかになると冒頭の事件も単なるプロローグではなかったこと分かる。巻頭を飾るに相応しい作品といえよう。
Episode2「落とし物合戦」
ラウンジのピアノの中に「落とし物」を見つけたという届け出があり、さらに自分が落とし主だという犯罪者が3人もやって来る。さて、どうなる?
Episode3「ようこそ殺し屋コンペへ」
アミュレット・ホテル別館で殺し屋コンペが行われるが、もちろんホテルに許可など取っていない。さらにこのコンペの標的にされたのがホテルのフロント係・水田であった。しかし次々と殺されて行くのはコンペに参加した殺し屋たち。水田の犯罪者としての過去も明かされ、最後は犯罪的にハッピーエンドになる。
Episode4「ボマーの殺人」
日本の詐欺王の一人息子とイタリア系犯罪組織「エピテル」の幹部の娘がアミュレット・ホテルで結婚式を挙げた。その披露宴の会場に爆弾が仕掛けられ、犯人はアミュレット・ホテルの所有権を要求。制限時間までに起爆を解除するコード番号を入力しないと大爆発が起きる。
犯人によって高層階と低層階が分断され、ホテル探偵の桐生は低層階で起きた殺人を解決して犯人から解除の番号を聞き出さなければならない。そして、被害者もコード番号を教えるダイイングメッセージを残していた。タイムリミットまでにその謎が解けるかという一編で、本書の締め括りにふさわしい内容である。
四編とも過不足ない仕上がりで、私は一気読みしてしまった。前作を読んでいないという方は、是非この機会に『アミュレット・ホテル』のほうも読んでいただきたい。^^
http://sealedroom.blog.jp
1 - 5件目まで(6件中)


