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- インド生リポ ●台湾編#1 香港が遠い〜〜!!
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エリア:
- アジア>台湾
- アジア>インド
- テーマ:鉄道・乗り物 その他
- 投稿日:2011/12/02 00:44
- コメント(0)
2011/09/29
イヤな予感はしていたのだ。
デリーへ出発する数日前に南海上に台風が発生していた。微妙な位置にいたが、まぁ時間的に避けられるだろうと思っていた。
ところが、東京を発つ前日、10月28日の夕方の天気予報で、
「南海上に台風がいますが、ご安心ください、日本へは来ませんから」とお天気キャスターの満面の笑顔。台風の進路を示す矢印は思い切り香港の方を指していた。
今回デリーへは香港経由で行く。
香港まではキャセイパシフィック航空で、香港からはキングフィッシャー航空。香港で4時間ほどトランジットするが、その日の午後9時過ぎにはデリーに着く。
南海上の台風が不気味だったが、香港からはまだかなり距離があったので、なんとかぶつからずにすむだろうと思っていた。
10月29日午前10時半。羽田空港を定刻で飛び立ったCX543便は順調に飛行していた。
香港までは約4時間。近いものだ。機内食を食べ、持ってきたミステリーを読んでいると、じきに「着陸態勢に入りますので、シートとトレイを所定の位置にお戻しください」とアナウンス。シートに付いているビジョンを見ると、到着まであと1時間という表示。
早い。もう着くのだ。
香港へは香港が中国に返還される前に行ったきりだから、もう15年ぶりか。4時間のトランジットだが、きれいになった空港で買い物もしたいし、のんびりもできるだろう。
ところが。
着陸態勢に入ったというのに、ちっとも飛行機の高度が下がらない。1時間後の表示も一向に変わらない。飛行機は旋回を繰り返しているようなのだ。
眼下はもう香港なのだろう。けれど降りられないのだ。飛行機が混んでいて順番待ちしているのだろうか。
やがて高度が下がり始めた。
すると途端に機体が揺れ始める。
天気が悪いのか。この揺れ方は雲を突っ切るときのあの揺れだ。
すると後方の窓が光った。窓際の客が、すごい雨、あ、雷、また光った、と口々に言う。
思い出した。台風である。
台風はまだ香港からかなり距離があったはずなのに。もしや速度を早めて……とかよく聞くそういう状態になり、ぶち当たってしまったのか。
CAたちの動きが慌ただしくなる。あちこちで客の質問に応え、シートベルトをチェックして歩く。私は尋ねた。
「やっぱり台風ですか」
「そうです、でも大丈夫。ご心配いりませんよ」と笑顔。
飛行機は再び高度を上げ、雲上に出ると再び旋回し始めた。
あと1時間、の表示からすでに1時間以上は経っている。しかたないので私はミステリーを閉じ、「TOYSTORY3」を観ることにする。
機は依然高度の上げ下げを繰り返している。
どのくらい時間が経ったのか、ついに飛行機は意を決したように降下し始めた。
途端に揺れがくる。風にあおられ、エンジンがうなる。風に負けじと機体を水平に保とうとし、そのひずみで揺れもひどくなる。
私はトイストーリーを止め、ビジョンを見る。高度がどんどん下がっていくのがわかる。距離も時間も瞬く間に縮んでいく。
もう少しだ。
もう少しで着陸する。着陸したらホッとして、コーヒー飲んで買い物して……。
距離はあと20kmもない。時間はあと10分程度。
揺れる。
大丈夫、たいしたことない。前にソウルに行ったときも稲光のなか、無事に着陸した。
距離は10kmを切り、あと5km、4km……ビジョンはほんの数分後だと告げている。もういつランディングしてもおかしくない……。
そのときだった。
突如、飛行機は上昇し始めた。
ものすごい勢いだった。普段飛び立つとき以上の急上昇。そして激しい横揺れ。
恐怖に心臓が圧迫する。アドレナリンがどっと出て、私はとっさに手を伸ばし、前の座席をつかんだ。そんなことしても全く意味がないと気付きながらも、何かに掴まっていないと倒れそうだったのだ(もちろんシートに座っていたが)。
いつまで昇るのか。いつまでこの状態が続くのか。
やがてふーっと機体が安定した。と同時に揺れもおさまり、乗客全体から緊張感が抜けた。
すぐに機長からアナウンスが流れた。
「台風のために香港国際空港に降りられませんでした。けれど、このまま台北に向かい、そこで給油したのち、再度トライします」
急きょ、私の乗っている便は台北へ行くことになったのだ。
そこから台北まで1時間ちょっと。台北で給油して1時間、また香港に向かったが、やはり降りられず、結局台湾に戻り、南部の高雄(クーシャン)で一泊することになった。
高雄に着いたのは午後10時頃。私たちはおよそ12時間飛行機に缶詰だった。わずか4時間の香港がなんと遠いことか。
そして何より、デリー乗継ぎもおじゃんになった。
それにしても急上昇があんなにも怖いものだとは思わなかった。
急降下のあの感じも怖いが、あの息詰まるような急上昇は人間の身体的な限界をすぐに越えそうだった。
高雄へ行く、と決めた機長が、
「今日はみなさまにとっても私たちクルーにとっても長い一日でした。台湾で今夜はゆっくり休んで明日こそは香港へ参りましょう」とアナウンスしたのが印象的だった。
確かに。一番疲れたのはパイロットたちだと思うしね。
とにかく落ちなくてよかった。
明日は無事に香港へ着けますように。そして、なんの前触れもなくキャンセルされたデリー行きの便の振り替えがちゃんと用意されてますように。。。
私はそう願ってやまなかった。
イヤな予感はしていたのだ。
デリーへ出発する数日前に南海上に台風が発生していた。微妙な位置にいたが、まぁ時間的に避けられるだろうと思っていた。
ところが、東京を発つ前日、10月28日の夕方の天気予報で、
「南海上に台風がいますが、ご安心ください、日本へは来ませんから」とお天気キャスターの満面の笑顔。台風の進路を示す矢印は思い切り香港の方を指していた。
今回デリーへは香港経由で行く。
香港まではキャセイパシフィック航空で、香港からはキングフィッシャー航空。香港で4時間ほどトランジットするが、その日の午後9時過ぎにはデリーに着く。
南海上の台風が不気味だったが、香港からはまだかなり距離があったので、なんとかぶつからずにすむだろうと思っていた。
10月29日午前10時半。羽田空港を定刻で飛び立ったCX543便は順調に飛行していた。
香港までは約4時間。近いものだ。機内食を食べ、持ってきたミステリーを読んでいると、じきに「着陸態勢に入りますので、シートとトレイを所定の位置にお戻しください」とアナウンス。シートに付いているビジョンを見ると、到着まであと1時間という表示。
早い。もう着くのだ。
香港へは香港が中国に返還される前に行ったきりだから、もう15年ぶりか。4時間のトランジットだが、きれいになった空港で買い物もしたいし、のんびりもできるだろう。
ところが。
着陸態勢に入ったというのに、ちっとも飛行機の高度が下がらない。1時間後の表示も一向に変わらない。飛行機は旋回を繰り返しているようなのだ。
眼下はもう香港なのだろう。けれど降りられないのだ。飛行機が混んでいて順番待ちしているのだろうか。
やがて高度が下がり始めた。
すると途端に機体が揺れ始める。
天気が悪いのか。この揺れ方は雲を突っ切るときのあの揺れだ。
すると後方の窓が光った。窓際の客が、すごい雨、あ、雷、また光った、と口々に言う。
思い出した。台風である。
台風はまだ香港からかなり距離があったはずなのに。もしや速度を早めて……とかよく聞くそういう状態になり、ぶち当たってしまったのか。
CAたちの動きが慌ただしくなる。あちこちで客の質問に応え、シートベルトをチェックして歩く。私は尋ねた。
「やっぱり台風ですか」
「そうです、でも大丈夫。ご心配いりませんよ」と笑顔。
飛行機は再び高度を上げ、雲上に出ると再び旋回し始めた。
あと1時間、の表示からすでに1時間以上は経っている。しかたないので私はミステリーを閉じ、「TOYSTORY3」を観ることにする。
機は依然高度の上げ下げを繰り返している。
どのくらい時間が経ったのか、ついに飛行機は意を決したように降下し始めた。
途端に揺れがくる。風にあおられ、エンジンがうなる。風に負けじと機体を水平に保とうとし、そのひずみで揺れもひどくなる。
私はトイストーリーを止め、ビジョンを見る。高度がどんどん下がっていくのがわかる。距離も時間も瞬く間に縮んでいく。
もう少しだ。
もう少しで着陸する。着陸したらホッとして、コーヒー飲んで買い物して……。
距離はあと20kmもない。時間はあと10分程度。
揺れる。
大丈夫、たいしたことない。前にソウルに行ったときも稲光のなか、無事に着陸した。
距離は10kmを切り、あと5km、4km……ビジョンはほんの数分後だと告げている。もういつランディングしてもおかしくない……。
そのときだった。
突如、飛行機は上昇し始めた。
ものすごい勢いだった。普段飛び立つとき以上の急上昇。そして激しい横揺れ。
恐怖に心臓が圧迫する。アドレナリンがどっと出て、私はとっさに手を伸ばし、前の座席をつかんだ。そんなことしても全く意味がないと気付きながらも、何かに掴まっていないと倒れそうだったのだ(もちろんシートに座っていたが)。
いつまで昇るのか。いつまでこの状態が続くのか。
やがてふーっと機体が安定した。と同時に揺れもおさまり、乗客全体から緊張感が抜けた。
すぐに機長からアナウンスが流れた。
「台風のために香港国際空港に降りられませんでした。けれど、このまま台北に向かい、そこで給油したのち、再度トライします」
急きょ、私の乗っている便は台北へ行くことになったのだ。
そこから台北まで1時間ちょっと。台北で給油して1時間、また香港に向かったが、やはり降りられず、結局台湾に戻り、南部の高雄(クーシャン)で一泊することになった。
高雄に着いたのは午後10時頃。私たちはおよそ12時間飛行機に缶詰だった。わずか4時間の香港がなんと遠いことか。
そして何より、デリー乗継ぎもおじゃんになった。
それにしても急上昇があんなにも怖いものだとは思わなかった。
急降下のあの感じも怖いが、あの息詰まるような急上昇は人間の身体的な限界をすぐに越えそうだった。
高雄へ行く、と決めた機長が、
「今日はみなさまにとっても私たちクルーにとっても長い一日でした。台湾で今夜はゆっくり休んで明日こそは香港へ参りましょう」とアナウンスしたのが印象的だった。
確かに。一番疲れたのはパイロットたちだと思うしね。
とにかく落ちなくてよかった。
明日は無事に香港へ着けますように。そして、なんの前触れもなくキャンセルされたデリー行きの便の振り替えがちゃんと用意されてますように。。。
私はそう願ってやまなかった。
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