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エリア:
- アジア > インド > コヴァラム
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テーマ:
- ビーチ・島
- / その他
2011/10/10
インドに入って約十日が過ぎる。
今、私はお気に入りのコバラムビーチにいる。
3回目で顔見知りも多く、私にとっては和みの場所。
一緒に来ていた友人たちもひと足先に日本へ発ち、私は相棒とのんびりしている。
が、その日突然その平穏は破られた。
私が滞在しているホテル、SEA VIEW PALACE(タイトル画像)に日本人女子のツーリスト一人がやって来た。
マネージャーのジーバン(27歳・男)がそっこー私のところへ来て、
「ユミ、新しい日本人が来た。会ってあげてよ」
この時期、まだ日本人ツーリストが少ないので、私もちょっとうれしく思い、ジーバンに連れられて彼女の部屋へ。
どんなコだろ。今日の夕ごはんを一緒に食べられるようなコならいいな……。
ところが、その日本人女子はとんでもないモンスターだった!
パッと見は色白で目が大きい、とてもかわいらしい女の子だった。
だがしかし。。。
以下、そのコとの会話。
私「こんにちはー」(明るく笑顔で)
女「ちょっとこの男、大丈夫? 絶対ヤバい、うそつきで人騙しそう!」
(ジーバンを指差し笑いながら)
私「(若干面くらいながら)あぁ、そんなことないよ、いい人だよ」
女「ううん、絶対ヤバいって。あなた気をつけた方がいい」
私「いや、大丈夫よ。すごくよくしてくれてるし」
女「あのねぇ、私、インドもう8回目なの。だからわかるんだよね!」
私「私もインド、8回目。……あのさぁ、初めからコイツは悪いヤツ、とか決めつけない方がいいんじゃない。それに私は何度もこのホテルにお世話になって、この彼とも人間関係あるし、だからいい人だってわかってるから」
女「なに? 私ねぇ、もう今まで何度もインド人に騙されて傷つけられてきたの!」
私「そんなふうに言うなら、なんでインドに来るの?」
ここで突然彼女はキレはじめ、イスから立ち上がると両手を振りまわし、
「あんたに忠告される必要ないんだけど! 私がどう思うと私の勝手でしょ! 私に忠告しないでよ!」そして、
「なによ、バカ女!」と、私を罵倒し始めた。
以下、彼女のセリフ。
「ああ気持ち悪い! 最初あんたを見たときから気持ち悪いって思ってたけど、やっぱり気持ち悪い! あんたみたいな女が日本をダメにすんの!
なによ、私よりバカなくせに!
あんたね、私の学歴知ってんの? 私の職業なんだか知ってんの?
日本では私の方があんたよりずっとエライんだから!
このバカ!」
私は開いた口がふさがらなかった。
この人、アタマおかしんじゃないの。
彼女は「なによ、バカ!!!」を連発しながら部屋に入り、思い切りドアを閉めた。
バタン!
が、このホテルの部屋は閉めただけでは閉まらない。中から鍵をかけて初めて閉まるしくみ。
ドアが開く。女は再びドアを閉める。
バタン!
またドアが開く。
バタン!
何回も猛り狂うようにドアを閉めるが、しくみに気づかない彼女は、
「タテツケが悪いィィィッ!!!」と叫び、部屋から出てくると、廊下のバルコニーに両手をついて、ヒステリックに叫び始めた。
もう相手にしてもしょうがないので、部屋へ戻ろうとすると、彼女は、 以下、英語と日本語のちゃんぽんで、
「私は東京大学を卒業した! 私はドクター! 私はすごいの! ああもう日本はおしまい! 放射能を浴びて日本は終わっちゃうの! わかる? ああなんてこと!」
……と、コヴァラム中に響きわたるような声で。
その頃にはあまりの騒ぎにホテルの全スタッフがお庭に勢ぞろい。みな、彼女を見上げてぽか〜〜〜ん。
日本人である私に説明を目で求めるが、私自身もよくわからんし、もはや関わりになりたくもない。
やがてジーバンが私のところに飛んできた。
私は正直に、「いや、彼女があなたのことを悪く言うもんだから、そんなことないよって言ったら、突然ああなった」
ジーバンもそれできょとん。が、とりあえずお客である彼女をなだめに向かった。
なんなんだ、あの女。
あまりのクレイジーさに私は戦意を喪失し、部屋に入った。
やがて相棒が戻ってきた。
「ちょっと、あのコなんなの。ケンカでもしたの」
私は事情を説明する。相棒は、「はぁ、おかしいわ、それは」
相棒も彼女と少し話をしたそうだ。Y子と名乗る女は、
「みんなが私をバカにするの。あのマネージャーも、あの女も。ねぇ。あなたわかる? 日本はもうおしまいなの。放射能でもう全部ダメになる……」
それをここで言ってもどうにもならないんじゃない? 相棒が言うと、
「あなたも何もわかってない!!」
--と言ったそうだ。
「あのコ、泣いてたよ。目が完全にイッちゃってた。病んでるね、病んでる」
しょうがねぇなぁ。
何しにインドに来てるんだ。
クスリでもやってんのかっつーの。
その日の夕方、ホテルのレストランでぼ〜っと海を見ている彼女を見かけた。
それを見たのが最後で、翌朝Y子はチェックアウトして去った。
昼間顔を合わせたホテルのオーナーであるラルが、にやにやしながら、
「ユミ、クレイジージャパニガールが来たって? 日本人もいろいろいるんだね」
「同じ日本人として恥ずかしいよ。でももうチェックアウトしたんでしょ」
「ああ。……彼女、もう2~3泊したいって言ってたんだけど、丁重にお断りしたよ、部屋が空いていないってね」
部屋は60%ほど空いてるみたいだけど……やるじゃん、ラル。
インドでも客を拒否ることもあるんだね。ま、これ以上迷惑かけられてもホテル側だって……ねぇ。
……って、寄りによってインド人に拒否られるなんてサイテーじゃないか。
インドは全てがウェルカムな国なのに。
まさにモンスターツーリスト!
でもって、自分の学歴やら職業やらを振りかざして相手を罵倒する人間に初めて会った。
インドに8回も来てると言っていたが、結局インドのことも心の底では「貧しくて可哀そうでバカな人ばかりいる国」と思っているに違いない。
相棒いわく、
「やっぱさーインドに来る日本人って、日本の社会からドロップアウトしちゃった人が多いってことだよね。社会になじめない人っていうかさぁ。私たちも気をつけないとね」
確かに。
余計なお世話だが、あの彼女が日本の社会でうまくやれているとはとても思えない。
彼女によれば、私が彼女をバカにしたということだが……。
……バカに? 私はふつうのことをふつうに告げただけだ。
インドにはいろいろな旅行者がやって来る。
でもその全てを受け入れてくれる、インドの懐の深さを改めて実感した。
けど、罵倒された私をどうしてくれるんだっての。
「バカ女」だとか「気持ち悪い」とか「おまえが日本をダメにする」とか。
まったく名誉棄損もいいところだ。これ、言葉の暴力でしょ。
どうもね、じーさんだのばーさんだのモンスターだの、今回のインドではおかしな人ばかりに会う。台風のせいで予定が狂ったりして、最初からケチがついた今回のインド。
今後は大丈夫だろうか。
漠然とした不安を感じながら、今日もアラビア海に沈む美しい夕陽を見ている。
インドに入って約十日が過ぎる。
今、私はお気に入りのコバラムビーチにいる。
3回目で顔見知りも多く、私にとっては和みの場所。
一緒に来ていた友人たちもひと足先に日本へ発ち、私は相棒とのんびりしている。
が、その日突然その平穏は破られた。
私が滞在しているホテル、SEA VIEW PALACE(タイトル画像)に日本人女子のツーリスト一人がやって来た。
マネージャーのジーバン(27歳・男)がそっこー私のところへ来て、
「ユミ、新しい日本人が来た。会ってあげてよ」
この時期、まだ日本人ツーリストが少ないので、私もちょっとうれしく思い、ジーバンに連れられて彼女の部屋へ。
どんなコだろ。今日の夕ごはんを一緒に食べられるようなコならいいな……。
ところが、その日本人女子はとんでもないモンスターだった!
パッと見は色白で目が大きい、とてもかわいらしい女の子だった。
だがしかし。。。
以下、そのコとの会話。
私「こんにちはー」(明るく笑顔で)
女「ちょっとこの男、大丈夫? 絶対ヤバい、うそつきで人騙しそう!」
(ジーバンを指差し笑いながら)
私「(若干面くらいながら)あぁ、そんなことないよ、いい人だよ」
女「ううん、絶対ヤバいって。あなた気をつけた方がいい」
私「いや、大丈夫よ。すごくよくしてくれてるし」
女「あのねぇ、私、インドもう8回目なの。だからわかるんだよね!」
私「私もインド、8回目。……あのさぁ、初めからコイツは悪いヤツ、とか決めつけない方がいいんじゃない。それに私は何度もこのホテルにお世話になって、この彼とも人間関係あるし、だからいい人だってわかってるから」
女「なに? 私ねぇ、もう今まで何度もインド人に騙されて傷つけられてきたの!」
私「そんなふうに言うなら、なんでインドに来るの?」
ここで突然彼女はキレはじめ、イスから立ち上がると両手を振りまわし、
「あんたに忠告される必要ないんだけど! 私がどう思うと私の勝手でしょ! 私に忠告しないでよ!」そして、
「なによ、バカ女!」と、私を罵倒し始めた。
以下、彼女のセリフ。
「ああ気持ち悪い! 最初あんたを見たときから気持ち悪いって思ってたけど、やっぱり気持ち悪い! あんたみたいな女が日本をダメにすんの!
なによ、私よりバカなくせに!
あんたね、私の学歴知ってんの? 私の職業なんだか知ってんの?
日本では私の方があんたよりずっとエライんだから!
このバカ!」
私は開いた口がふさがらなかった。
この人、アタマおかしんじゃないの。
彼女は「なによ、バカ!!!」を連発しながら部屋に入り、思い切りドアを閉めた。
バタン!
が、このホテルの部屋は閉めただけでは閉まらない。中から鍵をかけて初めて閉まるしくみ。
ドアが開く。女は再びドアを閉める。
バタン!
またドアが開く。
バタン!
何回も猛り狂うようにドアを閉めるが、しくみに気づかない彼女は、
「タテツケが悪いィィィッ!!!」と叫び、部屋から出てくると、廊下のバルコニーに両手をついて、ヒステリックに叫び始めた。
もう相手にしてもしょうがないので、部屋へ戻ろうとすると、彼女は、 以下、英語と日本語のちゃんぽんで、
「私は東京大学を卒業した! 私はドクター! 私はすごいの! ああもう日本はおしまい! 放射能を浴びて日本は終わっちゃうの! わかる? ああなんてこと!」
……と、コヴァラム中に響きわたるような声で。
その頃にはあまりの騒ぎにホテルの全スタッフがお庭に勢ぞろい。みな、彼女を見上げてぽか〜〜〜ん。
日本人である私に説明を目で求めるが、私自身もよくわからんし、もはや関わりになりたくもない。
やがてジーバンが私のところに飛んできた。
私は正直に、「いや、彼女があなたのことを悪く言うもんだから、そんなことないよって言ったら、突然ああなった」
ジーバンもそれできょとん。が、とりあえずお客である彼女をなだめに向かった。
なんなんだ、あの女。
あまりのクレイジーさに私は戦意を喪失し、部屋に入った。
やがて相棒が戻ってきた。
「ちょっと、あのコなんなの。ケンカでもしたの」
私は事情を説明する。相棒は、「はぁ、おかしいわ、それは」
相棒も彼女と少し話をしたそうだ。Y子と名乗る女は、
「みんなが私をバカにするの。あのマネージャーも、あの女も。ねぇ。あなたわかる? 日本はもうおしまいなの。放射能でもう全部ダメになる……」
それをここで言ってもどうにもならないんじゃない? 相棒が言うと、
「あなたも何もわかってない!!」
--と言ったそうだ。
「あのコ、泣いてたよ。目が完全にイッちゃってた。病んでるね、病んでる」
しょうがねぇなぁ。
何しにインドに来てるんだ。
クスリでもやってんのかっつーの。
その日の夕方、ホテルのレストランでぼ〜っと海を見ている彼女を見かけた。
それを見たのが最後で、翌朝Y子はチェックアウトして去った。
昼間顔を合わせたホテルのオーナーであるラルが、にやにやしながら、
「ユミ、クレイジージャパニガールが来たって? 日本人もいろいろいるんだね」
「同じ日本人として恥ずかしいよ。でももうチェックアウトしたんでしょ」
「ああ。……彼女、もう2~3泊したいって言ってたんだけど、丁重にお断りしたよ、部屋が空いていないってね」
部屋は60%ほど空いてるみたいだけど……やるじゃん、ラル。
インドでも客を拒否ることもあるんだね。ま、これ以上迷惑かけられてもホテル側だって……ねぇ。
……って、寄りによってインド人に拒否られるなんてサイテーじゃないか。
インドは全てがウェルカムな国なのに。
まさにモンスターツーリスト!
でもって、自分の学歴やら職業やらを振りかざして相手を罵倒する人間に初めて会った。
インドに8回も来てると言っていたが、結局インドのことも心の底では「貧しくて可哀そうでバカな人ばかりいる国」と思っているに違いない。
相棒いわく、
「やっぱさーインドに来る日本人って、日本の社会からドロップアウトしちゃった人が多いってことだよね。社会になじめない人っていうかさぁ。私たちも気をつけないとね」
確かに。
余計なお世話だが、あの彼女が日本の社会でうまくやれているとはとても思えない。
彼女によれば、私が彼女をバカにしたということだが……。
……バカに? 私はふつうのことをふつうに告げただけだ。
インドにはいろいろな旅行者がやって来る。
でもその全てを受け入れてくれる、インドの懐の深さを改めて実感した。
けど、罵倒された私をどうしてくれるんだっての。
「バカ女」だとか「気持ち悪い」とか「おまえが日本をダメにする」とか。
まったく名誉棄損もいいところだ。これ、言葉の暴力でしょ。
どうもね、じーさんだのばーさんだのモンスターだの、今回のインドではおかしな人ばかりに会う。台風のせいで予定が狂ったりして、最初からケチがついた今回のインド。
今後は大丈夫だろうか。
漠然とした不安を感じながら、今日もアラビア海に沈む美しい夕陽を見ている。