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ねこたんの足あと

~あちこち行って。いろんなもの見て聞いて歩いて食べて。~

プロフィール

ニックネーム:
yummy
居住地:
東京都
性別:
女性
自己紹介:
本業は小説を書くかたわら、
占いとヨガのサロンを主宰しています。

占いは手相とタロットカード。
ヨガは南インド ケララ州で州公認のインストラクター資格を取得しました。
少人数制のクラスを展開しています。
ご興味のある方は、
http://alvayu.jp
にアクセスしてみてくださいね。


小さい頃からアフリカに憧れていて、海外旅行デビューはエジプト。それからケニアへ行き、念願のサバンナに。アフリカのあとにアジアに行き始め、人からはよくルートが逆だよ、と言われました。

私はその国の何かひとつでも見たいものがあれば、どこへでも行きます。それがきっかけですが、あとは行き当たりばったり。何かをするため、にその国へ行くわけではなく、ただただその国に浸かるような旅をします。
だからこそ、生きた情報をその場で得ることができるのだと思います。

どちらかといえばカオス的な国を旅するのが好きですが、でも近年ヨーロッパも堪能しました。先進諸国もきっちり知り、その両方を知ることが大事だと思ってますから、あまり偏ることもありません。

もうずっとヨガ修行をするため、定期的にインドへ行っています。一回の旅行期間は約2ヶ月ほど。滞在型なのでその地については精通していきます。前回は昨年11月に、今年もまた秋に訪れる予定です。

私が旅先で出会ったできごとや人たち、おいしいものやホテルやショッピング、交通事情、失敗談や病気になったこと、コワかったことなどのトピックや情報が旅する人たちの役に立てばとてもうれしいです。

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ドキュメンタリー小説 マダガスカル・ジャーニーVOL.2 マダガスカル最初の夜 
エリア:
  • アフリカ>マダガスカル>アンタナナリボ
テーマ:街中・建物・景色 旅行準備 ホテル・宿泊 
投稿日:2011/06/24 23:42
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今はシーズンでホテルは混んでいる、と最初に助手席の男が言ったように、ホテルはどこもいっぱいだった。

最初の3軒はガイドブックの乏しい情報に従って連れて行ってもらった。が、全て満室。
マダガスカルでタナでこの遅い時間に3軒ともフラれるとは予想外だった。それは私だけでなく、彼と彼女も同じだったようだ。
「じゃあ何軒か僕らが知っているところにあたってみよう」
助手席の男が励ますように言った。が、その後も数軒不発に終わった。
まずい。
時間は過ぎる一方だし、ここまでタクシーを連れまわしたとなると、最初の交渉金額に上乗せされかねない。
そして、疲れてきた。
早くホテルでほっとしたい。
助手席の男がホテルのレセプションから戻ってきて、首を振った。
ここも満室らしい。
OK。ドライバーがハンドルを叩いて振り返った。
「ワシの知り合いのホテルに連れて行ってやろう。ただし、安くはないぞ」
……背に腹はかえられない、この際。

ホテル・ド・プリンスという名のホテルは確かにゲストハウスには見えなかったが、一泊の料金はそれほど高くはなかった。が、部屋は5階建ての最上階のスイートルームしか空いておらず、日本円にすると3000円ほど。
私たちは顔を見合わせた。
部屋にはツインベッドとソファがあった。
「どうする? 3人でシェアする?」私はふたりに訊いた。
「……オレはいいけど、もしキミらがイヤでなかったら」
彼はソファを指差し、オレはここで寝るから、と付け加えた。
「私もかまいませんよ」彼女も頷いた。
3人でシェアすれば一人1000円ですむ。一泊1000円はバックパックの旅としては安くはないが、部屋がよさそうなので納得できる。
バスルームへ行き、トイレの水が流れることとお湯のシャワーが出ることを確認する。
これで決まりだ。
私たちはタナの街を徘徊してくれたドライバーたちに礼を言い、おカネを渡した。

初めて出会った人と部屋をシェアすることは、一人旅では時々あることだ。
これまでにもそういうことがあったが、トラブルになったことは一度もない。それは不思議に幸運なことだ。
私たちは荷物をおろし、顔や手を洗い、ようやくほっとした。
部屋の中央にはテーブルがあり、ソファとイスがある。私たちはテーブルを囲んだ。

「オレは佐藤 陸」自分の寝床になるソファに座った彼が名前を告げた。
「私はハルカ。野田 遙です」私の隣に座った彼女が言う。
「私は」ふたりが私を見る。「秋野 楓」
最初の自己紹介は照れくさく、みなぎこちない。仕事のときはそんなふうに感じないのに。肩書きの入った名刺の力なのかもしれない。
「今夜は突然こんなことになっちゃったけど」リクが話し出す。
「オレ、明日朝早く出る予定だから」
「何時頃?」
「たぶん、6時とか7時。気にしなくていいからさ」
「タナから移動するんですか」ハルカが訊いた。
リクは頷き、
「アンチラベに向かう予定。マダガスカルをぐるってまわって、タナは最後にゆっくり見るつもりなんだ。……キミらは?」
「あ、私も午前中にはホテル出ますよ」
「どこかに行くの」今度は私が尋ねた。
「知り合いがタナに来ていて。その人に会う約束してるんです」
「しばらくタナにいる予定?」
彼女は首を傾げると、
「うーん。その人の予定によっては出るかも。たぶんその人とマダガスカルをまわると思うから」
「えーっと、か……」リクが私を見た。
「カエデ」
「うん、カエデさんは」
「私は……2〜3日はタナにいるつもり。けど、ふたりが出るんじゃ、ホテルを探さないとなぁ。一泊3000円を一人で払うのはキツいし」
「宿、混んでそうでしたもんね」
「うまく見つかればいいけどね」
「ま、朝になれば動くツーリストもいるだろうから」とリク。
私はリクを眺めた。
ほとんど坊主で陽に焼けた精悍な顔付き。
「あのさ」私は彼の小型のバックパックに視線を向け、
「荷物少ないよね。そのバッグ、ふつうのナップザックみたい」
ああ、彼はザックを引き寄せると、
「デカいのはナイロビの宿に預けてあるんだ。2〜3週間くらいで戻るからって」
「えー、ってことは相当長い旅なんですね」ハルカが目を輝かす。
「うん、まぁ……3年ぐらいかけてバイクで世界一周するんだよね」
驚いた。
「で、今ちょうど1年たった頃で」
「どこを走ってきたの」
リクは私を見ると、
「カナダから出発して北米、南米を縦断して、で、セネガルに飛んで西アフリカを南下して、南アフリカから今は東を北上中」
「アフリカのあとはヨーロッパ?」
「そう。ヨーロッパをまわってトルコからユーラシアを横断するつもり」
はぁ、私もハルカもため息をついた。
リクはそういう反応にはもう慣れているらしく、特に顔色も変えず、
「マダガスカルは中休みみたいなもん。ナイロビでバイクを点検に出しててね。それとスーダンとエチオピアのビザを申請してる最中で。ビザがおりるまで何日もかかるっていうからさ。じゃ、その間バックパッカーの気分でも味わおうかと思って」
そこまで言って、リクはようやく笑顔を浮かべた。
世の中、思い切ったことをする人がいるものだ。
「すごいなぁ。3年かぁ。私は日本出てから3カ月くらいなんですけど、あと3カ月くらいで帰る予定なんです」
「ハルカさんはどこ行ってきたの」リクが尋ねた。
「タイにしばらくいて、そのあとナイロビに。……カエデさんは?」
「私は……」
今回は3週間とちょっとの旅だ。
最初の数日をナイロビで過ごした。そしてマダガスカルに2週間、残りの1週間をケニアのビーチ、モンバサと国立保護区であるマサイ・マラで締めくくる予定でいる。
私には時間がない。だからマダガスカルも行きたい場所を効率よくまわるつもりでいた。
「3週間じゃあっという間ですね」
私はハルカの言葉に頷き、
「仕事があるからね。さすがに何カ月も休めない」
「仕事してるんだ」リクとハルカが同時に言った。
「え。うん。ふたりは?」
「私はバイト辞めてきました」
「オレも」リクは私から目を逸らし、
「仕事、何してるの」
フリ-のライターやってる、私は告げた。
「へー。リクさんもカエデさんもなんかカッコいいですねぇ」
「ふぅん、いい仕事だね」
リクは無表情につぶやいた。

マダガスカルの初めての夜、私たちはずいぶん遅くまで話していた。

私を咬んだコロちゃん
旅のトラブル対処法・健康編3 〜インドで犬に咬まれたら。。。
エリア:
  • アジア>インド
テーマ:街中・建物・景色 その他 動物 
投稿日:2011/06/14 19:58
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実際、インドにもタイにもネパールにも、つまりアジアには野良犬が山ほどいる。
毛が短いつるっとした犬。暑さに適したわんこたち。
彼らはいたっておとなしく、人間が何かしなければ何もしてこない。
店の軒先に寝ていても道端で座っていても、
彼らは彼らなりに上手に人と距離を保っている。

でも、もっとかまってほしーーという気持ちがありありと伝わってくるのが、ちょっと哀しくなる。

だって基本、触っちゃダメだからね。
病気持ってる可能性大だからね。
虫もいっぱいいそうだしね。

動物好きの私としては本当はかわいがりたいのだけど、旅の途中に犬によって病気になるのは絶対に避けたい。
……と、ずっと思っていたのだが、昨年インドで「犬に咬まれる」という大失態をした。
あれは本当に「油断した」の一言。


南インド・ケララ州のコバラムは、インドではレアなビーチリゾートだ。
リゾートといっても海とヨガとアーユルヴェーダしかない素朴なビーチ。マリンスポーツはサーフィンのみ。けどホテルやレストランは揃っていて不自由もない、どこまでもまったりできる場所。
そして野良犬がたくさんいる。彼らはビーチを駆け回り、時にはオープンエアのレストランに入ってきたり、ビーチ裏の迷路のような路地に突然集団で現れたりして人を驚かす。が、いたって平和的だった。

私はビーチ沿いの「SEA VIEW PALACE」というホテルに長逗留していた。
そこに一匹の犬がいた。
他のつるっとした犬とは違い、キャラメル色のロン毛をしたインドでは珍しい犬で、見た目おっとり、私は勝手に「コロちゃん」と呼んでいた。
最初は野良かと思っていたが、実はホテルの番犬だった。
けど勝手に外出したり、離れたレストランに出没したりしていたので、まぁ半野良といえなくもない。が、夜はちゃんとホテルに戻り、2階のゲストルームに上がる階段の途中で眠る。
ちゃんと番犬の役目を果たしているのだった。

何日も泊まっていたので、そのうち私とコロちゃんは顔見知りになり、挨拶する仲になった。そして頭を撫で撫でするようになった。……今考えてみれば、このときすでに私は油断していたのだろう、いつもの旅とは違うことをしていたのだから。
彼の本名は「ランボー」。
こんなおっとりした犬になんでそんな荒くれた名前を付けたんだろ?
それともうひとつ。なんでホテルのマネージャーもスタッフも彼に対していまいち遠慮勝ちなんだろ。
いいこちゃんなのにね。

ところが、ある朝のこと。
コロちゃんは突然私に牙を剥いた。
その日もいつもと同じように寝そべっているコロちゃんにおはよう! と声をかけ、頭を撫でた。
その瞬間だった。
目にも止まらぬ速さで右腕をガブリ!!!
痛みより、まず驚いた。
右手のひらから血がつーっと垂れた。
次の瞬間、脳裏に浮かんだ言葉は「狂犬病」。

そうなのだ。
インドやアジアで犬に咬まれて最も恐ろしいのは狂犬病なのだ。
日本では犬には狂犬病予防接種をすることが義務づけられているが、こちらではない。特に野良犬は100%接種は受けていないといっていいだろう。
狂犬病は、もし発症したら100%死に至る怖ろしい病気だ。
ヤバい。
ホテルのスタッフが集まってきて、私はすぐに水で傷口を洗った。スタッフたちは私を心配しつつも口々に、

コイツは注射しているから大丈夫だよ。
みんな咬まれてるけど、誰も死んでないから大丈夫。
時々急に咬むんだよ、ランボーは。だからみんな気をつけてるんだ。

……なるほど。だからスタッフはみなコロちゃんに遠慮がちだったのね。。。

大丈夫だとは言われたが、やはりすぐに病院へ行くことにした。


歩いて10分ほどのところにあるUPUSANA病院へ着くと、ドクターがすぐに診てくれた。
さて、インドでは犬に咬まれて病院へ行くと、たとえどんな犬に咬まれようとも狂犬病の予防接種を受けることが法律で決まっているという。

予防接種の回数は全部で5回。
まず咬まれた当日、その三日後、一週間後、2週間後、28日後だ。
その日は狂犬病以外に破傷風予防の注射もうってもらった。
料金は700ルピー(約1400円)。

三日後にまた来なさい、と言われたが、実は帰国日が迫っていて、どうしようかと思ったが、結局、滞在を一週間延ばし、3回目の接種を受けたところで日本へ帰国した。
ちなみに狂犬病予防接種の一回の料金は、以後500ルピーだった。

日本へ帰ってからも引き続き接種を受けねばならなかった。
だから感染症病棟がある病院を探した。接種はどこの病院でも受けられるわけではないためだ。いくつか見つかったが、料金をきくと、保険が使えない場合は一回につき1万円を超える。
最終的に見つけたのは、駒込にあるがん・感染症センター都立駒込病院。
ここはいつ行ってもワクチンが用意されており、保険もきいた。
インドでつくってもらったカルテを持って病院へ行き、4回目の接種。
料金は保険がきいて約5,000円。単純計算でもインドの5倍。

あと一回だ。……が、ドクターがこんなことを言った。
「あなたを咬んだ犬が、あなたを咬んでから10日以上無事に生きていれば、その犬は狂犬病ではないので、あなたは5回目の接種を受ける必要はありませんよ。……でも、その犬が今どうしてるかわからないですもんねぇ」
いや。わかる。
私はすぐにまだコバラムにいる友人に連絡をとった。
ありがたいことにコロちゃんは元気にしているという。
ということは私にはもう接種は必要ないということか。

以前同じコバラムで犬に咬まれた友人は、もっともそのときはジーンズの上から甘噛みされた程度だったのだが、彼女は結局5回の接種を受けた。が、そのときの犬は完全な野良だった。そして10日後、その犬が生きているかどうか確認はできなかった。それもあって彼女は根気よく接種を受けたのだが、私の場合は状況が違う。
コロちゃんは元々接種を受けており、今なお元気だというのだ。
じゃあまぁ大丈夫か。
今回はこれで止めておこう。
その旨を後日病院に電話して伝えた。

お次は海外旅行保険の請求だ。
全ての治療が終わった時点で請求ができる。私は自分が持っている某クレジットカード会社に電話し、書類を取り寄せた。
病院側のサインなど特別なものが必要になるかと思ったが、クレジットカード会社の請求申し込み用紙に必要事項を記入し、治療の領収書を添付するだけで済んだ。けっこう迅速に処理してくれたようで書類を送ってから10日後ぐらいには銀行口座にインドと日本でかかった治療費が全額支払われた。

あーーーよかった。。。


さて。
今回学んだことは、やっぱり絶対に犬に咬まれないようにすること、だ。
痛いし。かなり血も出たし。痛みがひくのも跡が消えるのにも時間がかかったし。
そしてムダな出費も。

もちろん、海外旅行保険に入っていて、正当な手続きをすれば治療費は戻ってくるが、旅行中は実費で払わねばならない。

インドで接種1回500ルピー、日本円にすれば1000円ぐらいで大して高くないと思いがちだが、実はこの値段、医者の言い値なのである。
ローカルの知人によれば、ワクチン一回500ルピーなんてあり得ないほど高いそうだ。言われてみれば確かにそうだ。500ルピーなんてインドの庶民には簡単に払える額ではない。

あの医者。マジメな顔してツーリストだと思ってボリやがって。

おカネも確かにかかるが、それ以上に恐いのはやはり狂犬病だ。
日本ではリアル感がない病気なので軽視しがちだが、毎年インド、アジア、アフリカでは数万人規模で人が死んでいるという。
動物好きが手を出したくなる気持ちはわかるが、インドではそこはぐっとガマンして犬をやり過ごした方がいい。
ヨーロピアンなんかはよく野良犬の頭をぐりぐり撫でたり、ごはんをあげたりしているが、彼らも無類の犬好きなのか危機感がないのか、バカなのか…。
現地に滞在していた某日本人男子も「オレ、3回も咬まれてるけど平気だよ〜〜」とお気楽にかまえていたが、狂犬病は咬まれて10年経ってから発症する場合もあるのだ。アイツ、死ななきゃいいけどね。

けどもし、万が一犬に咬まれた場合。

すぐに傷口を水と石鹸で洗う。石鹸はウィルスの侵入を防ぐそうだ。
それから早く病院へ行こう。インドの病院はほぼワクチンをストックしているから安心だ。
あとはドクターに言われた通り、接種を受け続けること。
その際の領収書はしっかりもらってね。

「でもねぇ、あなたはまたきっとインドに行くんでしょう。そしたらね、渡航する前に予防接種を受けて行った方がいいんですよ。狂犬病だけじゃなくA型肝炎やコレラとか、他にもいくつかね」
以上が駒込病院のドクターの言葉である。

それにしてもコロちゃんに咬まれてショックであった。
わんこだって虫の居所が悪いときもあるもんね。けど人間と違って外からはわかりづらいしさ〜〜。

にも増してさすがインドと思ったのは、
咬んだコロちゃんを誰も責めなかったこと。
これがニホンとか欧米だったら、ホテルの犬が客を咬んだなんてことになったら大変な騒ぎになる、まちがいなく。
犬は最悪の場合、処分。
治療費、通院費は当然ホテル持ち。
訴訟にもなりかねない。

そこらへん、インドって鷹揚。
咬まれた人間が不注意。。。ってコトで事が終わってしまう。
だから、もしインドで犬に咬まれても、
結局責任は自分でとることになる。
治療費出せ! なんてホテル側に迫ってもお互いが困ることになるだけなので、……やっぱり触らぬ犬にタタリなし。。。ってことでね。


痛々し〜〜でしょ、この傷。

咬まれた手。ズキズキ。。。

アンタナナリボ
ドキュメンタリー小説 マダガスカル・ジャーニーVOL.1 タナへ
エリア:
  • アフリカ>マダガスカル>アンタナナリボ
テーマ:街中・建物・景色 自然・植物 ドライブ 
投稿日:2011/06/04 12:01
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満天の星空だった。

後にも先にもこんな星空は見たことがない。
こぶし大の数多の星が、手を伸ばせば届きそうな場所にある。
その輝きはきらきらとかピカピカという生易しいものではない。
ビカビカだ。ビカビカ光っている、えげつないほど。
夜空を埋め尽くす星たち。
私は初めて星酔いした。

ケニアのナイロビからマダガスカル・エアーで4時間。
マダガスカルの首都、アンタナナリボの国際空港に着いたのは午後9時頃だった。
到着ロビーは、ナイロビやボンベイとは全く違い、閑散としていた。
私は薄暗くだだっ広いロビーの真ん中で、足元にバックパックをおろしたまま一人ぽつんと立っていた。

さて。これからどうしよう。

時間的にも早いとはいえない。まずはホテルを探さねば。
それにはアンタナナリボの市内へ行く。
タクシーで向かうのがたぶんいい。
その前に両替しておいた方がいいだろう。
銀行は……到着ロビーにあると確か本に書いてあった。
私はロビーを見渡した。
すると、まばらな人影の向こうに二人の日本人がいた。
男子と女子。
彼らもこちらを見ている。
私はバックパックを背負うと彼らの方へ近づいていった。

こんにちは、声をかけると、
「どうも」男が軽く頭を下げた。
「こんにちは」女が笑みを浮かべた。「ナイロビの空港で見かけたんですけど、同じ飛行機だったんですね」
「どうやら日本人はオレらだけみたいだな」
私たちはぐるりとあたりを見回した。
ナイロビでもボンベイでも空港には日本人団体客がいたけれど、今は黒い肌の人々がちらほらいるだけだ。
「ホテル、決まってます?」私は尋ねた。
二人とも同時に首を振る。
「キミは?」今度は男が尋ねる。
私も首を振り、
「とりあえず市内に行こうと思ってるけど」
「オレもそう。なら、タクシーをシェアしようか」
「私も一緒に行っていいですか」
私は彼女を見た。かわいらしい丸顔の、まだ二十代前半と思われる女の子。
「ふたりは知り合いじゃないの」
彼らは顔を見合わせ、
「オレらもナイロビの空港で会ったんだ」
「そう、マダガスカル・エアーのカウンターで」
では、私たち三人とも初めまして、なのだ。

ロビーを出る前に両替をした。
マダガスカルの物価がよくわからないので、一応100ドルだけ換金した。すると手渡されたのは単行本のようにぶ厚い札束だった。
マダガスカル・フランの札にはマダガスカル固有のレミュー(原猿)、ワオキツネザルがプリントされていた。
このサル。しっぽが縞々のこのレミューを見るのも、私のマダガスカルでの目的のひとつだ。

外に出ると、やはりナイロビやボンベイと異なり客引きもまばらだった。
男二人組のタクシーの客引きが近寄ってきた。
たったひと組の客引きとは。ボンベイでの客引きの凄まじさを思うと、多少物足りない気もする。
交渉は英語だった。
タナ市内まで。OK、ついでにホテルも紹介してあげるよ。
話はすぐにまとまり、私たちはタクシーに乗り込んだ。バックシートに3人並んで座る。
走り出すと、助手席に座った二人組の一人が話しかけてきた。
ジャパニーズ? どっから来たの。マダガスカルは初めてかい?
タナまでは30分くらいだよ。今はシーズンでホテルは混んでるだ。。。
彼はタナ、タナと連発する。どうやらタナとはアンタナナリボの通称らしい。
窓の外は暗く何も見えない。道の両側が原っぱなのか川なのか何もわからない。遠く空港の灯りがゆっくりと後ろへ去っていく。
タクシーの揺れに浮遊するような奇妙な感覚。現実離れとでもいおうか。
ところがいくらも走らないうちに急にクルマのスピードが落ちた。
え、と思う間もなく、タクシーは道の端に寄り停まってしまう。
二人組はクルマを降り、前に回ってボンネットを開けた。助手席にいた男がこちらへ来ると、
「エンジントラブルだ。直すから、その間外に出ていていいよ」
空港から市内に向かう途中でもうトラブル!
やれやれ。
私はクルマのドアを開け外に出た。
暗い。隣に立った連れの顔もよく見えない。
なにげなく上を向いた。
その瞬間、私は息をのんだ。

満天の星。

暗い空は数多の星で埋め尽くされていた。
「すごい」
両隣でふたりが同じように息をのむのがわかった。
こぶし大の星がぎらぎらと光っている。
ピカピカなんてかわいいもんじゃない。
ビカビカ、ぎらぎら、だ。
えげつないほどの輝き。
私たちは3人ともばかみたいな顔で星空を見上げ続けていたに違いない。
頭がくらくらしてきた。
これが星酔いというものなのか。

エンジンが直り、私たちは再びタクシーに乗り込んだ。
「星を見ていたのか」
ドライバーが振り向いて尋ねた。
「うん、すごく星が見えるんだね。びっくりした」と彼女。
「ニホンじゃ星は見えないのか」
「見えるけど、ここほどじゃないよ」
「ふぅん? 星が見えない方が、ワシには驚きだがね」
ドライバーはにやりとした。にやりとしたのがわかったのは、きれいな白い歯が闇の中で浮き上がったからだった。

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