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- イタリアの花言葉をイタリア芸術「プリマヴェーラの花々」から学ぶ!
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エリア:
- ヨーロッパ>イタリア>フィレンツェ
- テーマ:鑑賞・観戦 歴史・文化・芸術
- 投稿日:2020/12/04 00:00
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ボンジョルノ!フィレンツェのガイドの伊藤裕紀子です。
今日はウッフィツィ美術館のボッティチェッリ作「春」に描かれた花々について書きたいと思います。

「春(プリマヴェーラ)」はボッティチェッリが「ヴィーナスの誕生」よりも数年前に描いた作品です。
オレンジの実が生る森を背景に8人の登場人物が横にずらりと並び、多くの草花が地面や人物の服の上に表現されています。
小さな花や植物が一面に広がる模様のことを、千花模様(せんかもよう)またフランス語のミルフルールという名で呼びます。イタリア語ではミッレフィオーリですね。
もとは中世後期〜ルネッサンス初期のタペストリーの模様として使用されていたモチーフです。
ボッティチェッリの「春」は暗い背景の手前にくっきりと描かれた人物像が、ほぼ横にずらりと並んでいます。立ち位置にしても背景にしても空間の奥行きを表現していないので、平坦な感じになり、その点も「タペストリー」のようだと見られています。
プリマヴェーラの画面には500種類以上の植物、190種類ほどの花(うち130種類は特定可能)が描かれています。

どのような花が見られるのでしょうか?いくつかの資料を読んだところ下記の花の名前が載っていました。
薔薇(愛のシンボル)
忘れな草
アイリス(フィレンツェの都市の紋章になっている花)
矢車草
きんぽうげ
ケシ
マルゲリータ(フランス菊)
すみれ
ジャスミン
オオバコ
クリスマス・ローズ(昔、精神病の薬と信じれれていました)
カモミール(ハーブティーで有名ですね)
苺
忘れな草は神様が万物に名前を与えた時に、この花が小さな声で神様に「私のことを忘れないで」と訴えたので、この名前になったという伝説があります。
ところで場面の右から2番目の人物クロリスの口からこぼれ落ちている花は何でしょうか?
これは薔薇とアネモネです。

花の名前はギリシャ語のアネモス(風)から由来していて、ラテン語のアニマ(魂、生命のひと吹き)につながっているんだとか。
またアネモネは、古代エトルリアの時代から死のシンボルとされてきました。
古代神話ではヴィーナスの恋人アドニスが猪に突き殺された時に、アドニスの血で染まった地面からアネモネが咲きいでたとされます。
オウィディウスの「祭歴」では、クロリスは風の神ゼフュロス(プリマヴェーラの場面の右端にいます)から逃れ、ついに捕まって抱きしめられた時に花がクロリスの口から溢れ出て彼女は花の神フローラに変身します。
ならば死のシンボルであるアネモネは、クロリスが一回死んで新しく生まれ変わることを示しているのでしょうか?
花言葉やシンボルとしての意味を考えていくと果てしなく深読みできそうですよね。
「プリマヴェーラ」の作品の前には柵がなくガラスが張られています。可能であれば他の人の鑑賞の邪魔にならないように、作品に近づいて緻密に描かれた花の様子も観察してみてください。

- イタリア芸術を観る。レオナルドの受胎告知と師匠ヴェロッキオ
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エリア:
- ヨーロッパ>イタリア>フィレンツェ
- テーマ:鑑賞・観戦 歴史・文化・芸術
- 投稿日:2020/12/01 00:00
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ボンジョルノ!フィレンツェのガイドの伊藤裕紀子です。
今日はウッフィツィ美術館に展示されているレオナルド·ダ·ヴィンチの「受胎告知」について書きたいと思います。

この「受胎告知」はレオナルドが単独で描いた最初の作品です。
以前はドメニコ·ギルランダイオの作品とされていましたが、現在ではぼとんど異論なくレオナルドの真作とされています。
当時レオナルドはヴェロッキオの工房で働いていて、ヴェロッキオ作「キリストの洗礼」(1472年頃)の中の天使像を描きました。つまり師匠との共作になります。
そちらとほとんど同じ時期に描いたのが「受胎告知」です。
厳格な遠近透視図法を用いた構図。密度のある細部の描写。知的な高貴さが漂う人物像。
背景には空気遠近法が使用され、遠くが青く霞んで見えるため、光の反射や大気の状態が意識されているのがわかります。
マリア様が本を広げている書見台の大理石装飾に注目してみましょう。
ライオンの足のような獣足脚、そして植物が脚の上でくるりと曲線を描いています。

これが当時、師匠のヴェロッキオが制作中であった「ピエロおよびジョヴァンニ·デ·メディチの墓碑」の細部と酷似しているんですね。
といっても違う場所にあるのでなかなか見比べることができないのですが、今日はそれぞれの場所で撮ってきた写真を見比べてみましょう。
師匠のヴェロッキオはメディチ家の庇護を受けるようになって、墓碑を制作します。
ピエロはあのロレンツォ豪華王の父親です。痛風で苦しんでいたので「痛風のピエロ」なんてありがたくない渾名で呼ばれる人物ですね。
墓碑はサン·ロレンツォ聖堂の中にあり、旧聖具室とサクラメント礼拝堂を隔てる壁に設置され、両方の部屋から鑑賞できるようになっている変わった墓碑です。
その墓碑の足の部分がこちら。確かにレオナルドが描いた書見台の足とよく似ていますね!

制作された年は
1470〜72年 「ピエロおよびジョヴァンニ·デ·メディチの墓碑」
1472〜75年頃「受胎告知」
なるほど師匠の作品からインスピレーションを得たと言われるのがわかります。

時間があれば2カ所とも訪れてみて、直に師匠と弟子の作品を見比べてみてくださいね。

- ウッフィツィ美術館でイタリア芸術の秋を感じる「ボッティチェッリ・もう1枚の東方三博士の礼拝」
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エリア:
- ヨーロッパ>イタリア>フィレンツェ
- テーマ:鑑賞・観戦 留学・長期滞在 歴史・文化・芸術
- 投稿日:2020/11/12 00:00
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ボンジョルノ!フィレンツェのガイドの伊藤裕紀子です。
10月終わりにウッフィツィ美術館に行ってみたところ、いつもボッティチェッリの「東方三博士の礼拝」が展示されている場所に見慣れぬ作品がありました。

係員に聞いてみたところ、元の作品は香港での特別展のため貸し出し中とのこと。
代わりに置かれている作品も、ボッティチェッリの同タイトルの作品でした。
こちらは見たことがないのでかえって新鮮。
【東方三博士の礼拝】
「東方三賢王の礼拝」「マギの礼拝」とも呼ばれる新約聖書の場面です。
ユダヤの王を捜して東方から星に導かれてやって来た三博士(マギ)は、ペルシア宮廷に仕える占星術師たちでした。
彼らはヘロデ王の配下からベツヘレムに向かうようの指示を受け、彼の土地で誕生した救世主の御子に出会います。そして黄金、乳香、没薬の3つの贈り物を捧げました。
普段ウッフィツィ美術館でみることができるボッティチェッリの「東方三博士の礼拝」は1475年ごろの作品で、メディチ家のメンバー(コジモ、ロレンツォ、ジュリアーノ)がイエスを取り巻く人々のなかに書き込まれています。
そして現在展示されている作品は1490〜1500年ごろの作品ということで、もっと後年の絵画です。ドメニコ修道会のサヴォナローラの説教の影響から、神秘主義へと傾向していったボッティチェッリ。
制作活動の最終フェーズの作風へと移行しているのがわかります。
多くの人々を引き連れた三博士は聖母マリアに抱かれたキリストに出会い、その前に跪いています。

この作品はボッティチェッリが完成できなかったらしく、マリア様の部分には17世紀ごろに筆が付け加えられています。

背景の人間や岩には色が塗り重ねられていないことがわかりますね。

同じ芸術家でも初期、盛期、晩年と作風が変化していく様子が見受けられることが多いのです。
ドナテッロやミケランジェロ同様、ボッティチェッリも後年にキリスト教の精神へ帰依していく、その経過を見るのはとても興味深いですね。

- Uffizi美術館でふと見逃してしまう作品 3
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エリア:
- ヨーロッパ>イタリア>フィレンツェ
- テーマ:鑑賞・観戦 歴史・文化・芸術
- 投稿日:2020/11/03 00:00
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今日はフラアンジェリコが描いた(テーベ地方隠者達)をご紹介したいと思います。
この絵の作者については色々な説があり、私がイタリアに来て最初に買った1500リラの(現在の8ユーロ弱)ウッフィッイ美術館のカタログでは、ゲラルド・スタルニナの作品となっていました。
1420年頃の作品で、現在はフラアンジェリコの絵として断定されています。
Uffizi美術館でこの絵だけ床から65センチの高さ、低い所に飾られています。
理由は、すごく魅力的な絵でおとぎ話のような絵の為、特に子供に人気があり、子供の目線で見れるように飾ってあるからなんです。
この作品は紀元4世紀に、聖パコミアがエジプトのテーベ地方に創立した場所で、隠居し修行を行う修道士の生活を描いたものです。
祈りと孤独、労働で一生を過ごしていました。

どこからともなく射す月の光に照らし出された夜景は、少し神秘的です。
この岩だらけの景色の中で、修道士や隠者の毎日の生活が描かれています。
当時、このテーマはよく描かれ、アカデミア美術館にもウッチェッロが描いた絵があります。
ここでは自然が食糧を与え、他の世界から隔離して平和に過ごしているという事ですが、よく見ると不思議な生活やいろいろな動物を見つけることが出来ます。
1人の修道士は、木のへこみに住んでいます。
また聖ベネディクは洞窟に住んでいますが、誰かが上から食事をかごで運んでいます。
またライオンの車に引かれた人。その右には小さな柵があって、他の人との境界が区切って在り、手前では仕事、奥では静けさにふけっている様子が描かれていますが、これは活動的な人生と、瞑想的な人生を表現していると言われています。
そのすぐ右では男が荷を載せたロバを扉の方に押していて、その上には懺悔の礼拝堂で告知を聞く修道士、その上では天使を見た恍惚状態の修道士、などなどです。

川にはクロコダイルもいて、カラスが口からパンを落としていて、それを聖パウロとアントニオが分けていたり、他にもヤギが乳を搾らています。
ここには日常生活が沢山描かれてる訳ですが、これはフラアンジェリコの「人間と動物の関係」についてのメッセージでもあると思われます。
孤独や祈りは必要であるけれども、お互いに助け合い、「自然をリスペクトしなさい」ということです。
船が小さかったり、建物が小さくて修道士が入れない建物もありますが、実際の景色と似ています。
作者はすべての細部までを描き、毎日の生活、木の葉、石ころ、波などリアルな景色を表現しています。
写真では細かい所がわからないのですが、是非Uffizi美術館に来られた時は近くで見てください!

- フィレンツェの近代美術館
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エリア:
- ヨーロッパ>イタリア>フィレンツェ
- テーマ:観光地 鑑賞・観戦 歴史・文化・芸術
- 投稿日:2020/10/16 00:00
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ボンジョルノ!フィレンツェ公認ガイドの伊藤裕紀子です。
今日はあまり日本のお客様が訪れない美術館をご紹介します。
フィレンツェの近代美術館はピッティ宮殿の3階(secondo piano)にあります。
ピッティ宮殿には他にも「大公の宝物殿」「パラティーナ美術館」「衣装博物館」「ボーボリ庭園」「陶磁器博物館」などがあり、全部見学するのは大変ですよね。
もっとも人気があるのはラファエロの作品を鑑賞できる「パラティーナ美術館」ですが、もし興味があったら近代美術館にも足を踏み入れてみてください。
30もの部屋に18世紀終わりから20世紀始めまでの作品がずらり。
その時代のイタリアを代表する芸術家たちの作品を網羅した美術館になっています。
展示方法が時代別になっているので、進みながらイタリア近代美術の歴史を見ることもできますよ。
肖像画が多いのもこの美術館の特徴です。宗教画ばかりで疲れた、気分をリフレッシュしたい人にもおすすめです。

新古典主義のピエトロ・ベンヴェヌーティから、ロマン主義のフランチェスコ・アイエツ。
マッキャイオーリと呼ばれる、19世紀フィレンツェの色斑画法による革新的な芸術運動に属する画家たちの作品。
そしてキャンパスに色を分割して並べ、視覚混合で光と色の表現を最大限に発揮した新印象派。

ルネッサンスのイメージが強いフィレンツェをまた違った観点から知ることができる楽しい美術館です。
6 - 10件目まで(11件中)


